【飯綱の森から見える北アルプス槍ケ岳】

【飯綱の森から見える一夜山・白馬三山】

【飯綱の森から見える戸隠表山・五地蔵山・高妻山】

【飯綱の森から見える戸隠山西岳】

【飯綱の森から見える飯縄山南峰】

【飯綱の森から見える飯綱笠山】

散歩がてら、小屋の周囲を歩いていくと、林の間や林の頭越しにいろいろな山が見える。
すぐ近くでは、小屋からもすぐのところに見える笠山がある。小屋を出てすぐの山裾を登っていけば行けそうな山だ。いつかは行ってみたいと思っている。

飯縄山も山頂が見える、でも本当の頂上は、さらにあの向こうだ。冬の間は、ここから見ていると登山者の姿が見れた。ラッセルの跡もはっきり見えていた。これからは樹木が伸びてくるし、モノトーンの季節と違い見えにくくなるんだろう。
この小屋がある地域の中を通る道路では、所どころで道路の延長線上の森の切れ間から、向こうに、ひょっこり見慣れた山の姿が見える場所がある。その先に見えるのは、たいがい戸隠山の西岳の一部だ。今は、荒々しい岩峰がその表情を露にしているが、冬の方が急峻で雪も付かない岩峰と雪のコントラストが一層荒々しさを引き立てているような気もする。
少し離れた高台へ行くと、戸隠山の全貌が見える場所がある。西岳、表山、裏山の高妻山が、で〜んと聳えている。今、この辺りは、菜の花が咲き、まっ黄色の絨毯が敷かれた様だ。ここも、もう少しすれば、夏そばが蒔かれ、白いそばの花の絨毯に変わる。

目を左に向けると、ここからは北アルプスの山並みが見える。北部の白馬三山から南部の槍ケ岳・穂高の山並みも遠望できる。この日は、天気が良かったので、真っ白な槍ケ岳がくっきり穂先を青空へ突き立てていた。
近くに見えるのは、この地に棲む鬼達が、一夜で山を築き上げたという、一夜山伝説の一夜山だ。戸隠西岳連峰の続きのようなところにあるが、この山は独立峰なのだ。

新緑の森 

名残の山桜の花びらが、どこからともなくヒラヒラ舞ってきた。芽吹き始まった森に野鳥の歌声が響き渡る。
里では、4月の初め頃、見たような、記憶が定かではなくなったコブシが、今ここでは盛んに咲いていたり、若草色の新芽に混じってカエデやブナ、ミズナラなど木の種類によって、芽吹きの初期に、葉っぱが赤や茶色っぽくなる木があり、「えっ、紅葉じゃないよね?」なんて思わせる。そんな春真っ盛りの高原だ。

前回は、まだ雪があった3月に来たので、2ヶ月ぶりの飯綱だ。里ではすっかり初夏の装いで、日中は20℃を超す気温になるが、飯綱では、早朝は0℃くらいまで下がり、日中でも15℃くらいだ。陽射しが暑いけれど、頬を渡る風は冷たく気持ち良い。日ごとに新芽は成長しているのだろうが、まだまだ森の中を透かして向こう側が見えているくらいの葉っぱの量だ。もうしばらくすると鬱蒼としてきて陽射しも遮ってヒンヤリするような森になるだろう。

久しぶりに娘と休みが一緒になったので、新緑の山旅に出かけた。目的地は、もちろん飯綱だけれど、今回は、昔の思い出の地を通って行くことにした。

しばらく前に、娘が小さい頃のアルバムを見ていたら、2歳くらいの頃だっただろうか、長野へ行く途中の写真があり、それが碓氷の国道18号線の旧道脇で撮ったものだった。あの頃は、高速道路など無く、国道18号線の碓氷バイパスか旧道を通って長野へ行った。この旧道の脇に、既に廃止になった信越線でも、明治26年から昭和38年まで使われた旧線跡があり、そこに架かるめがね橋をバックに写した写真だった。

その写真を見て以来、もう一度あの場所へ行って、同じような写真を撮ろうと言っていたのだった。
上信道の松井田妙義インターで一般道路へ降りて、横川を通過。国道を通っていた頃は、ここで一休みして「おぎのやの峠の釜めし」を食べたけれど、今は廃れてしまった。
横川駅付近から、碓氷バイパスと旧道に分岐し、旧道を進むと坂本の街並みを過ぎて碓氷湖の脇を少し行くと、煉瓦造りのアーチ橋が見えてくる、これがめがね橋だ。まさにあの時写っていた橋だ。二十数年ぶりということになる。

久々に国道18号線の旧道を通ってみると、道幅は狭く、あの頃は大型トラックが頻繁に走っていたし、カーブなどで、何回も怖い目に合ったような気がする。今は、車の往来は少ないようで、時間に余裕のある人だけがゆっくり走っているようだ。この日は、天気も良く緑のトンネルをゆっくり走った。さすがにカーブの数は多く183箇所あるようだ。この道路を登りきると、すぐ左側に新幹線が出てきて軽井沢駅だ。右手には大きな浅間山が噴煙を上げていた。

しばらく軽井沢を走り、国道を離れて山沿いを走る浅間サンラインを走る。この道路も良く通った道路だ。見晴らしの良い道路で御代田、小諸の街を見下ろせ、八ヶ岳連峰から美ヶ原、南アルプス、北アルプスとすばらしいパノラマが広がる。

まずは、窓を開けて空気の入れ替えをし、小屋の掃除を済ませて一休み。お茶を飲みながら、ぼんやり外を眺めていると、ガラス窓越しに、キビタキが2羽やってきて小屋のすぐ前の小枝で追いかけっこをしながらしばらく遊んでいった。
キョッ、キョッと鳴き声をあげて飛んで来たアカゲラも、近くの木に営巣中のようで頻繁に2羽がコツコツコツコツ木を突っついていた。さっそく、小鳥達の歓迎を受けた

小諸インターから再び上信道へ入り、小一時間で長野へ到着。暑い、15℃を超えていた。やっぱり善光寺平は盆地、日中は暑い、陽が落ちれば気温が下がるのだろう。そして善光寺さんの裏山へ、長野市街地が全貌出来るが、逆光ぎみで全体が光っているようだ。七曲を上がっていく。大座法師池を過ぎると肌にヒンヤリした空気が気持ち良い。ようやく飯綱小屋に到着だ。

小屋からガラス窓越しに見る飯綱の森に夕暮れが訪れようとしていた。今の時期、日が長く日の入りがずいぶん遅くなっている。この日は良い天気ではあったが、長野市街地から見る飯縄山は、時折ガスがかかって姿が見えなくなっていた。小屋に着いてからも、何回かガスが飯縄山の山頂の方から白い舌を音もなく伸ばすようにやってきて、すぐそばの笠山を一瞬飲み込んでしまう。そんなことを繰り返しているうちに、飯縄山のなだらかに伸びた裾野の林の向こうに赤い太陽が沈んでいった。ちょうど戸隠の方向だ。この小屋の位置では太陽が見えなくなっても、少し左よりの方を見れば、まだまだ夕焼け色に染まっていて、暮れるには、しばらく間があった。外では、ウグイスやアカハラが今日最後の囀をしていた。

森の朝は早い。人間も現金なもので、好きなことをする時は眠気なんてどこへやら・・・私も例外ではなく、まさにその通り、早起きをした。この朝は、気温が下がっていて、寒暖計を見たら0℃くらいを示していた。

外へ出てみると、野鳥の囀りでいっぱいだった。ウグイスは、あちこちで歌い、歌合戦さながらの様相だ。上手に囀る♪ホォ〜ホケキョ ホォホォホォ〜ホケキョ 下手な囀りをするのもいる。調子っぱずれのもいる。でも、そろそろ皆上手くなってきたようだ。家の森にも縄張りをもつウグイスが1羽いるようで、朝早くから囀っている。どこにいるかと見上げると、さえずりがケッキョケッキョという警戒音、所謂「谷渡り」に変わる。相手がこちらを認めた証拠だ。

とは言っても、こちらからウグイスの姿を見つけるのは、なかなか難しい。まだ、葉っぱが少ない今は、囀っている方向を見定めて、じっと見ていると、彼らは必ず動く。ウグイスは、落ち着きの無い鳥なので見つけ易いが、ジッとしていないのでじっくり見ることは難しい。囀ってはちょっと枝を移ってまた囀る。
♪キョロンキョロンキョロリンチリリリと朝早くから囀っているアカハラ、ツガだったかカラマツの木だったか高い木の天辺で歌っている。

初め何の鳥だか分からなかった。鳥見万年初級の私は、アカハラを知っていたけれど、地面の葉っぱをひっくり返している姿しか見た事がなく、こんな高い木に止まって森中に響き渡る囀りをすることを知らなかった。

少し離れた低い木では、ホオジロがすんだ音色で囀っていた。♪チョッチョッリー ピィーチョッピピロピィー♪しかし、早朝から10時くらいまで、ほぼ同じ場所で囀り続けていた。また、夕方近くになると同じ場所で囀っていた。

翌朝は、前日アカハラガ止まっていた木にホオジロが止まって囀っていた。こちらもアカハラに負けじと♪チョッチョッリー ピィーチョッピピロピィーと澄んだ囀りを長い間続けていた。場所を取られてしまったアカハラは、前日のホオジロと同様少し離れた枝に止まって囀っていた。しかし、場所を取られてしまったのが気に入らなかったのか、離れた場所へ飛んで行き囀りはじめた。

歩いていくと、さっきのアカハラの囀りが近づいてきた。林の間を通して、少し遠いところの、やはり高い木の天辺で囀っているアカハラを発見した。双眼鏡でそっと覗くと、一生懸命歌っている。すると囀りながら周囲を見回しているようで、双眼鏡と目が合って?しまったのか、囀りを止めた。そして私が立っていた道路の脇の木に飛んで来て私の真上の枝に止まった。何で選りに選って?私の頭上へ来たんだろう。カメラを向けても平気だ。人間に興味でも持ったようにしばらくの間、頭上の枝で止まっていたが、またさっきの木へ戻って囀りはじめた。

また、少し歩いていくと別のアカハラの囀りが聞こえてきた。最初アカハラ?と・・・だって、とっても下手糞な囀りなんで、でも聞いているとやっぱりアカハラだ。さっきのはテンポ良く♪キョロンキョロンキョロリンチリリリだったが、こいつは♪キョロンキョンチリリっていう感じで字余りじゃなく字不足な囀りだった。まだ若様だったんだろうか?

2ヶ月ぶりの飯綱は、春真っ盛りだった。里では、初夏の陽気だが、山ではまだまだ芽吹き始めたばかりの新緑がすがすがしい時季だ。

ヤマザクラはほぼ終わったが、散歩コースの道路わきに1本だけ、花を咲かせていた。小屋の脇にあるヤマザクラは見上げても花の気配は無いのに、庭仕事をしていると、時折花びらが舞ってくる。その度に上を見上げるが、どこから舞ってくるのか分からない。

この辺りのミズバショウは、既に終わっているが、所どころに忘れたように白い苞が見えた。今、葦の湿原では、黄色いリュウキンカが咲き乱れているが、湿原に近づくとオオヨシキリがうるさいほど鳴いている。
葦原にはオオヨシキリが似合う?が、どうも静かな高原には似つかわしいくないように思う。

森を歩けば、足元には白く可愛いニリンソウがいっぱい咲いている。

これから、森はもっといい季節を迎える。森の生き物達も短い夏を思いっきり過ごすために、いよいよ活動開始だ。そんな森だった。

HOME
Back to Nature Info
HOME
  marutagoya  2007 May. 25 tama
inserted by FC2 system