用事を済ませて小屋へ向かった。

翌朝は、快晴で冷え込みが強かった。東京の暖かさに慣らされた体は、実際より寒く感じる。でも今ごろなので氷点下5℃くらいだ。
2月に行ったときは、積雪30cmくらいだったが、今も同じくらいだ。最近は、連日雪が降っていたようだが、やはり春先の雪は、降っても降っても明るい太陽の光のほうが強いのか、日中は水分をたっぷり含んだザラメのような雪になってしまう。
そして、春先は地面も温まってくるのか、木の根元を中心にその周囲は雪が消え始めて地面が出てきている。木も冬篭りから目ざめ、再び活動し始めたからだろうか。でも、昨年と比較すると1ヶ月季節が早い。もっとも、昨年は平成大寒波というほどの寒気が、断続的にやってきて、大雪を降らせ、この時期は、積雪150cmくらいもあって真冬だった記憶がある。それに引き換え今年は、もう雪解けだ。
小屋の屋根から落ちた雪の深さも1mに達するかどうかくらいしかない。周辺の雪の中を歩くにしても、長靴だけでよい。ワカンをつける必要が全くない。陽射しの中に居れば、防寒着もいらない。雪に反射する照り返しが暖かい感じさえする。

付近を歩き回ったが、やはり野鳥の鳴き声がない。2月のときも静かだったが、どうしたことだろう。来る途中の雲上殿、花岡平の辺りのほうが野鳥は見れた。ミヤマホウジロ、ジョウビタキ、ホウジロ、ウソ、カワラヒワなどがいた。

春 待 つ 森

暑さ寒さも彼岸まで・・・と、そのとおりの気候となった。2月は暖かくて、3月に入ってもそのまま暖かな日々が続いていたので、このまま春へまっしぐらかと思っていたら、真冬なみの寒波が襲来して、彼岸直前に東京で初雪を観測した。観測史上一番遅い初雪だとか・・・。

そんな彼岸の後半になって、用事ができたので信州へ行った。薄曇の東京を昼前に出発した。辺りの景色は、まるで春霞のかかった私の頭の中の様な、春景色だ。桜の開花宣言も出され、何時になったらお花見かと思っていたら、私が毎日通うバス通りの桜並木で、ソメイヨシノが場所によっては、もう五、六部咲きになっている木が数本あるのに気がついた。その他は、まだ蕾のままだけれど、オオシマザクラは白い花を満開に近い状態に咲かせていた。

高速道を走るが、景色はやはり春霞の向こうで、いつも見えている景色が見えてこない。あの辺りに赤城山が、あそこには浅間山がと、いつも見えている辺りを見ていて近づいていくとやはり、そこには見覚えのあるシルエットが、そして山肌が見えてくる。でも、やっぱり薄っすらした春霞の向こうだ。

いつもそうだが、横川から長野までの間は、いくつものトンネルを貫けて行くが、長〜い五里ヶ峯トンネルを貫け、もう1本短いトンネルを出たところは善光寺平が広がり、真正面に飯縄山がど〜んと目に入ってくる。普段はその周りの戸隠、黒姫、妙高の山容も見えるはずだが、この日は、ここでも霞がかった中に飯縄山だけが薄っすら見えていた。

このところ連日、氷点下を記録していて、その日の朝も−0.3℃と氷点下だったそうだが、日中は暖かくなった長野だ。市街地には雪の気配は無いが、市街地を見下ろす善光寺の裏山の雲上殿辺りに行くと、木陰に掃き固められた雪の塊りが見られた。やっぱり氷点下という気温が効いていたのだろう。でも、もう春はそこまで来ている。

森林植物園へ行ってみたけれど、雪上を歩く用意もしていかなかったし、時間も無かったので駐車場で車から降り、いい空気を吸いながら耳を澄ましてみたけれど、野鳥の鳴き声は、まったく聞こえない。
時折木々の間を吹き抜ける音が聞こえるだけだ。やっぱりここでも異変?が起きているかもしれない。
その足で、奥社の入り口まで行ってみた。ここでは、荒々しい戸隠の山容がグッと迫って来る。雪の無い時季にも荒々しさは十分伝わってくるが、この春先の天気がいい日には、もっとその荒々しさが目と耳によって形容される。

断崖絶壁になっている部分は黒々しているが、稜線に沿っては雪庇が張り出し、傾斜の緩い壁には雪が付いて、そうでないところは黒々岩肌を見せている。このコントラストがすばらしい。この張り出した雪庇から落ちる落雪、斜面に付いた雪が陽射しに融けて重くなり落ちる、この時の音がすごい。

ドドドド〜ンと腹の底に響くような
大きな音がする。これからしばら
くの間は、こんな光景が見られる
だろう。

今回は、小屋へくる目的で来たのではないので、ちょっと忙しい。でもここまで来たのだから、やっぱり戸隠そばを食べていかなければと、ひとっ走り戸隠まで足を延ばした。良く行くそば家へ。相変わらず混んでいるかと思いきや、今日は空いてるぞ。奥方を席とりに降ろして、車を駐車場へ。店に入って注文すると、その後から後からお客さんが入ってくること、ちょうどいいタイミングで入ったというものだ。

久しぶりの戸隠そばを美味しくいただき、スキー場へ行ってみた。飯綱のスキー場は雪不足で、営業中止しているが、戸隠は大丈夫。でも、南向きの斜面は閉鎖中で、西向きの斜面のみが滑走可能。平日で雪不足も手伝って、スキーヤーは、パラパラいるだけ。若かりし頃は、ここのコブだらけのチャンピオン、シルバーコースをがんがん滑り降りた、あの頃の事が思い出される。やはり今ごろの時季になると朝夕はガリガリ、日中はザックザックのザラメ状態、そんな中早朝から日暮れまで良く滑った。そんなことを思い出しながら、スキー場を眺めてた。

ついでに、牧場まで行ってみた。

ここは、本当に今は何にもない。夏の間は、牧場やキャンプ場として、あるいは戸隠の裏山である五地蔵山や高妻山・乙妻山への登山口となって賑わい、流れる鳥居川の冷たさに、涼を求めてやってくる人達でごった返す。
ただ黒姫山が綺麗な山容を見せてくれる。黒姫山は、北信五岳の1つで典型的なコニーデ型の姿をした山で、なだらかな山容から信濃富士とも呼ばれているが、登山といった面からは地味な存在かも知れないが、山頂や周囲に池がたくさんある。

しばらく静寂の中で、黒姫山を眺め、もう30年も前になるだろうか、夏の暑い日に登ったことを思い出した。原生林に覆われた、眺めの悪い山だったことを思い出した。山麓のスキー場には、数え切れないほど通った。そんなことをぼんやり遠い記憶の中に見つけていた。

ここでは、少し野鳥の鳴き声が聞こえたが、何だったか分からない。今の時期の戸隠は、種類こそ少ないけれど、結構小鳥たちに逢えるはずだったけれど・・・そんな魅力あるところなんだけれど、どうしたのだろう。

いつもの年ならば、今頃は長〜い冬に飽きあきして、気候的には春の兆しはあっても、たくさんの雪によって、真冬のような状態にあるのだが、この冬は少し違うようだ。

冬でも一番寒さが厳しい1月末から2月中旬までの寒中が、暖かくて、スキー場が営業できなくなるくらいだから、それは相当の暖かさだったのだろう。田舎に住む母親などは、この冬は「ぬくとくて」(暖かくて)楽だと言っていた。

里では、ウメ、アンズ、サクラと順に花がほころび始めたが、山ではまだまだ花の気配は感じられないが、割と日当たりが良い場所にある樹木では、芽吹きを感じる木々もある。

また、積雪量だけからすると昨年に比べ約1ヶ月以上早い雪解け状態だ。と言うより積雪が少なかったと言うほうが正解だと思うが・・・。

この湿原は今、葦の枯れた茎がボウボウとしているが、もう少しして4月の終わり頃になると、リュウキンカが黄色いじゅうたんを、この湿原いっぱいに花広げる。

それより前には、流れる小川に沿って、水芭蕉が、青々した葉っぱとともに、白い仏炎苞を見せてくれる。

この湿原の中を通る木道は、娘が2歳くらいのときに、黄色いリュウキンカが真っ盛りのときに来て以来、毎年のように春夏秋と来ている。

ここから見える飯綱スキー場は、既に土が見えている。先月来た時には、あそこで滑ることができたのに、その後の暖かさで営業中止になったと聞いたが、こんな状態ではやっぱりダメだったんだろう。

静かな雪の森の中でスノ
ーシュー遊びをしている
一団を見つけた。
近年、こんな遊びがある
けれど、やはり中高年の
人たちばかりだ。

近くを流れる川の瀬音も
雪に吸収されてしまうの
か聞こえない。

静まり返った森の中から、
スノーシューの一団が発する歓喜の声だけが聞こえる。これも、ただはしゃいでいる言葉と言うより人の声だと分かる音が聞こえるだけだ。
ここでも、やっぱり小鳥のさえずりは聞けなかった。

そろそろ引き返すことにする、これから東京まで帰らなければならない。
もと来た道を引き返し、飯縄山が見える大谷地湿原へ来た。

ここ飯綱、戸隠高原では、雪を頂いた峰々が遠望できるが、山麓では、すっかり春色をした風景になりつつ・・・・春待つ森といった風景だ。

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  marutagoya  2007 Mar. 30 tama
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