鏡池は名前のように、戸隠山を湖面に鏡映しするには、早朝の風が無くさざ波がたっていない時でないと難しい。
でも、そんな良い時に出っくわすこともなかなかない。これまでも何回か通ったが、綺麗に映って見えたことは数回しかない。

今回は、時雨ていたし風も結構あったので寒くて、鏡映しどころではなく早々に退散してきた。それでも、池を囲うような樹林は綺麗に紅葉し、ピークは過ぎたものの遠目に全体風景として見る分には、まだまだ見られる風景だった。
戸隠は、標高1300m。この時期特有の時雨。晴れていたかと思うとガスと霧雨のようなものが辺りを覆う。この地は、既に紅葉の盛りを過ぎ、綺麗な紅葉も残ってはいるが、大方はもうくすんで透明感のない葉っぱになって冬を待つ体制に入ったかのようだ。

戸隠へ来れば、森林植物園内をほっつき歩くのが定番だけど、今回はついでに来たことだし、時雨れていて寒くて、そこいらをほっつき歩く気分にもなれず、駐車場までで引き返し、通り道の鏡池をのぞくことにした。
鏡池で風景を見ていても、じっとしていると結構寒く、長居は無用と早々に引き上げることにした。
道路わきにはまだ綺麗な紅葉がたくさん見られる。宝光社の宿坊街へ出たところで、これは見事な紅葉に出合った。赤というより黒に近い赤ではあるけれど、透明感があって暗さが無い、すばらしい赤色が見事だった。

そろそろ戸隠に別れを告げて、晩秋の色濃いバードラインの紅葉のトンネルを飯綱へ向かって引き返した。まだ、キノコは盛んに出ているのか、バードライン脇の林から、びくを担いで人が出てきたり、林の中に人影が見える。
最近は、こういった山菜取りが盛んだが、クマなどに出会わないようにご用心ご用心!

春先から、ひと夏そして秋。この間にこの小屋を囲う森にもいろいろなことがあったようだ。
古くなった木が何本か冬の雪の重みか、台風や雨などによって倒されていた。しなやかな若木は、古倒木の下になっても、柔軟な幹はその重みに耐えながらしなっていた。古倒木を取り除いてやると、若木はバネの如く跳ね上がった。しかし長い時間との戦いで曲げられた幹を元に戻すことができるのだろうか。もうすぐまた冬がやってきて、白い雪が覆いつくす。その重みに耐えられるまでに伸びきれるかが、この木の今後に影響するのだろう。
小屋では、ここ3日間ばかり滞在する。まずは水道の元栓を開き、中の掃除だ。建てたばかりの年は、屋内にカマドウマがたくさん入り込んでいたが、最近は少なくなってきた。それでも2〜3匹はいる。掃除機をかけて、雑巾がけをする。
後は、寝心地を良くする為に布団を乾燥させる。これで準備万端。

さてさて、やっと小屋へ来ることができた。春以来だから半年ぶりだ。あの頃は、まだ雪が一面に残り、ようやく樹木の周りだけ雪が融けて地肌が出始めた頃で、夜が明けると薄っすら雪が降って一面白くなっていた。

今は、紅葉のピークが過ぎ、樹木の葉っぱが少しの風にハラハラと舞い、木々の間から向こうが見通せるようになってきた。小屋の横にある真っ赤なもみじは名残惜しそうに、鮮やかだった面影を残している。寂しくなっていく森の中で少しばかり華やかさを感じさせてくれる。

半年ぶりに小屋へでかけた。今回は田舎で甥の結婚式があったので、小屋の様子を見ながら行くことにした。
今回は週末にかかったが、行きは金曜日だったので渋滞に巻き込まれることは無かったが、帰りはやや早めには出たものの、渋滞に巻き込まれた。といっても大渋滞ではなく、通常3時間のところを4時間かかって帰ってきた。

いつものように、関越自動車道大泉JCTから入り埼玉県を通過、群馬県に入るとすぐに上信越道へ分岐し上信国境の八風山トンネルを抜け、そして信州へと向かった。
埼玉県内は、田んぼ中を、住宅街の近くを、里山を切り開いた中を走る。車窓から見える稲刈りが済んだ田園風景は、のんびりした様子だ。紅葉黄葉には、まだ早いようだが少しずつ色づき始めているようだ。

群馬県に入って上信道へ進むとネットで知り合いの”かぜくささん”のホームタウン近くを通過する。この辺りへ来ると今までとは様相が少しずつ変わってきて山あいを走る。山といっても、私の感覚では、里山の延長線上みたいなものだ。
でも、もう少し進むと山稜がノコギリの歯のようにギザギザした妙義連山が、丸っこくこんもりとした周囲の山々とは対照的で威容な姿が目に入ってくる。沿線の木々の色づき具合も少しずつ色彩が鮮やかになってくる。

やがて、群馬、長野の県境の長〜い八風山トンネルだ。この県境は、その昔は50前後のカーブを通る国道が碓氷峠を越して、その次は国道の碓氷バイパスが出来て、今は上信越道を通り、トンネルを抜けると、いつの季節もそうだが、そこは別の世界が広がっている。

標高1000m 黄葉紅葉はもうピークが過ぎたのではないか、と思われる少しくすんだ色をしている。あとは紅葉黄葉の山々を見ながら、真正面に浅間山が”ようこそ信州へ”と、左手すぐ近くには、大きく独立した八ヶ岳が横たわり、遠くには、既に白い綿帽子を載せた北アルプスの連山が見える高速道を長野へ走る。

秋たけなわ 紅葉

長野市街地を走りぬけ、長野の裏山へかかる。この日は、いつも通る善光寺さんの裏の七曲は通れないので、オリンピック道路のループ橋を通る。登るにつれて黄葉紅葉の色鮮やかさが目に心地よい。道路が飯綱のスキー場へ突き当たる辺りにはススキがたくさん穂を揺らせ、日ざしにキラキラ輝いていた。

ここは、もうハイランド飯綱。標高も1100mを超えている。考えてみるとこの日は、2度目の1000m超えだった。道路の脇は、紅く染まった葉、黄葉がいっぱいだ。

お昼がまだだったので、そばを食べるべく小屋へは寄らず戸隠へ直行、いつも行く”うずら家”へ行った。この店はいつも盛況で、平日だというのに、この日も20〜30分待ちだった。

少し寒かったので、温かい天ぷらそば、ざるそば、きのこのてんぷら盛り合わせをたのんだ。今は新そばの季節だ。

ここの店の能書きにワサビの下ろし方がある。
下ろし金に砂糖を少々のせてワサビを下しながら雑ぜ合わせる。ワサビに砂糖を少々入れると、辛さが引き立って美味さが増すそうで、こんなこだわりが1つ、売りになっている。

確かに効く、ツーンと頭に来る。

戸隠では、既に紅葉の盛りを過ぎたが、まだこんな綺麗な紅葉も残っていた。
でも、この紅葉もこれまでなのだろう。紅に染まった葉はもうくすみ始めているし、緑から黄色、朱へと変わりつつある葉っぱも、今年はこれでお終いなんだろう。
木としては、もう葉っぱへは養分の供給を止めてしまい色づいてきたんだろうが・・・

見るほう側からすれば、全ての葉っぱが朱に染まって綺麗に紅葉した姿もいいけれど、私としては、こうした多彩な色調の色づきの方が好ましい。

今まで聞こえていた小鳥の鳴き声が、霧とともに聞こえなくなってきた。しばらく歩いたが霧が濃い。そのうちに薄れてきた霧の中に、またマヒワの集団が見えた。これもさっきと同じで飛び回って、次々と移動していた。藪からはホオジロが飛び出してきた。

戸隠は時雨れたり、晴れたりしていたが、ここ飯綱はいい天気だった。しかし次第に雲が増えてきて、暗くなり始めると同時に弱い雨が降り始めた。夜半になると雨脚が強くなったのか屋根を打つ雨音が少し気になった。夜中に目が覚めた時にも雨音は聞こえ、今日の日中は甥の結婚式があるのに、とちょっと心配になったがいつの間にか眠っていた。

朝になり目が覚めると雨音は無く、小鳥の声が聞こえてくる。カーテンを通して太陽の光らしく明るい。窓の外を見ると雲が多いながらも青空も見える。太陽の光も差し込んでくる。それじゃあと、皆より一足先に起きて、辺りを散歩して来ることにした。
双眼鏡とカメラを首から提げて出かけてみた。太陽の光が眩しい。
小屋を出てすぐに小さな音でチュイーンチュクチュクジュイーンという鳴き声が聞こえてきた。鳴き声のする方を見るが、なかなか見つからない。
いつの間にか霧が出てきた。霧の中に見える姿を、よ〜く見るとシラカバの高い枝に鈴なり状態で木の実を食べているマヒワの集団だ。

この一団、鈴なり状態で実を食べていたかと思うと一斉に飛び立って次の木へ飛んで行く。その光景は、霧のグレーを背景に無数のゴマ粒のようだ。一団が一斉に飛び立つとブ〜ンというような羽音が聞こえる。
もう冬鳥が来たのだ。そういえば、4月に来たときにも居たが、あれから渡って行って、また帰ってきたのだろう。

人間が、雑踏の中で齷齪している間に、自然界の生き物たちは、自然の法則にしたがった営みを続けていたのだ。

今回は、春以来半年ぶりに行った飯綱だった。
久々の綺麗な紅葉は、日々雑踏の中で暮らす私の心休まる一時だ。

ここへ行くのはメインではなく、他のイベントのついでに行ったので、あまりゆっくり戸隠、飯綱の辺りを歩き回ることが出来なかった。

そろそろ寒くなってきたが、まだまだ天気さえ良ければ自然の中を歩くにはいい時期だ。紅葉は終盤だが、これからはカラマツ林が黄色く染まりカラマツの黄葉が楽しめる。

空気も澄み、視界が利くようになり、既に初雪を冠した北アルプスの峰々が間近に見えるのもこれからの季節だ。

飯縄登山もこれからが良い。登っていくにもそんなに暑くなく、木々の葉っぱも落ちて視界が利くので、嫌気が差さずに快適な登山になる。頂上からの360度の大パノラマは日本海までも見渡せる圧巻だ。
ただ、この季節2000m級の山は、良い天気だと小春日和だが、ひとたび天候が崩れると冬山状態になるのでご用心。

霧が上がりはじまると、小鳥たちの鳴き声がまた聞こえ始めた。シジュウカラ、コゲラ、アカゲラ、カケスがようやく姿を見せてくれた。
他にも鳴き声が聞こえるが何鳥なのか、初級鳥見人の私には判らない。でも、色々な音色で聞かせてくれるさえずりで心地いい朝だ。

そろそろ、お腹もすいてきたので戻って朝飯でも食べよう。

さあ、来月は小屋の冬支度に行かなければ、雪が来る前に・・・行けるかな

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  marutagoya  2006 Oct. 28 tama
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