春先から、ひと夏そして秋。この間にこの小屋を囲う森にもいろいろなことがあったようだ。
古くなった木が何本か冬の雪の重みか、台風や雨などによって倒されていた。しなやかな若木は、古倒木の下になっても、柔軟な幹はその重みに耐えながらしなっていた。古倒木を取り除いてやると、若木はバネの如く跳ね上がった。しかし長い時間との戦いで曲げられた幹を元に戻すことができるのだろうか。もうすぐまた冬がやってきて、白い雪が覆いつくす。その重みに耐えられるまでに伸びきれるかが、この木の今後に影響するのだろう。
小屋では、ここ3日間ばかり滞在する。まずは水道の元栓を開き、中の掃除だ。建てたばかりの年は、屋内にカマドウマがたくさん入り込んでいたが、最近は少なくなってきた。それでも2〜3匹はいる。掃除機をかけて、雑巾がけをする。
後は、寝心地を良くする為に布団を乾燥させる。これで準備万端。
半年ぶりに小屋へでかけた。今回は田舎で甥の結婚式があったので、小屋の様子を見ながら行くことにした。
今回は週末にかかったが、行きは金曜日だったので渋滞に巻き込まれることは無かったが、帰りはやや早めには出たものの、渋滞に巻き込まれた。といっても大渋滞ではなく、通常3時間のところを4時間かかって帰ってきた。
いつものように、関越自動車道大泉JCTから入り埼玉県を通過、群馬県に入るとすぐに上信越道へ分岐し上信国境の八風山トンネルを抜け、そして信州へと向かった。
埼玉県内は、田んぼ中を、住宅街の近くを、里山を切り開いた中を走る。車窓から見える稲刈りが済んだ田園風景は、のんびりした様子だ。紅葉黄葉には、まだ早いようだが少しずつ色づき始めているようだ。
群馬県に入って上信道へ進むとネットで知り合いの”かぜくささん”のホームタウン近くを通過する。この辺りへ来ると今までとは様相が少しずつ変わってきて山あいを走る。山といっても、私の感覚では、里山の延長線上みたいなものだ。
でも、もう少し進むと山稜がノコギリの歯のようにギザギザした妙義連山が、丸っこくこんもりとした周囲の山々とは対照的で威容な姿が目に入ってくる。沿線の木々の色づき具合も少しずつ色彩が鮮やかになってくる。
やがて、群馬、長野の県境の長〜い八風山トンネルだ。この県境は、その昔は50前後のカーブを通る国道が碓氷峠を越して、その次は国道の碓氷バイパスが出来て、今は上信越道を通り、トンネルを抜けると、いつの季節もそうだが、そこは別の世界が広がっている。
標高1000m 黄葉紅葉はもうピークが過ぎたのではないか、と思われる少しくすんだ色をしている。あとは紅葉黄葉の山々を見ながら、真正面に浅間山が”ようこそ信州へ”と、左手すぐ近くには、大きく独立した八ヶ岳が横たわり、遠くには、既に白い綿帽子を載せた北アルプスの連山が見える高速道を長野へ走る。
秋たけなわ 紅葉
長野市街地を走りぬけ、長野の裏山へかかる。この日は、いつも通る善光寺さんの裏の七曲は通れないので、オリンピック道路のループ橋を通る。登るにつれて黄葉紅葉の色鮮やかさが目に心地よい。道路が飯綱のスキー場へ突き当たる辺りにはススキがたくさん穂を揺らせ、日ざしにキラキラ輝いていた。
ここは、もうハイランド飯綱。標高も1100mを超えている。考えてみるとこの日は、2度目の1000m超えだった。道路の脇は、紅く染まった葉、黄葉がいっぱいだ。
お昼がまだだったので、そばを食べるべく小屋へは寄らず戸隠へ直行、いつも行く”うずら家”へ行った。この店はいつも盛況で、平日だというのに、この日も20〜30分待ちだった。
少し寒かったので、温かい天ぷらそば、ざるそば、きのこのてんぷら盛り合わせをたのんだ。今は新そばの季節だ。
ここの店の能書きにワサビの下ろし方がある。
下ろし金に砂糖を少々のせてワサビを下しながら雑ぜ合わせる。ワサビに砂糖を少々入れると、辛さが引き立って美味さが増すそうで、こんなこだわりが1つ、売りになっている。
確かに効く、ツーンと頭に来る。
今まで聞こえていた小鳥の鳴き声が、霧とともに聞こえなくなってきた。しばらく歩いたが霧が濃い。そのうちに薄れてきた霧の中に、またマヒワの集団が見えた。これもさっきと同じで飛び回って、次々と移動していた。藪からはホオジロが飛び出してきた。
人間が、雑踏の中で齷齪している間に、自然界の生き物たちは、自然の法則にしたがった営みを続けていたのだ。
今回は、春以来半年ぶりに行った飯綱だった。
久々の綺麗な紅葉は、日々雑踏の中で暮らす私の心休まる一時だ。
ここへ行くのはメインではなく、他のイベントのついでに行ったので、あまりゆっくり戸隠、飯綱の辺りを歩き回ることが出来なかった。
そろそろ寒くなってきたが、まだまだ天気さえ良ければ自然の中を歩くにはいい時期だ。紅葉は終盤だが、これからはカラマツ林が黄色く染まりカラマツの黄葉が楽しめる。
空気も澄み、視界が利くようになり、既に初雪を冠した北アルプスの峰々が間近に見えるのもこれからの季節だ。
飯縄登山もこれからが良い。登っていくにもそんなに暑くなく、木々の葉っぱも落ちて視界が利くので、嫌気が差さずに快適な登山になる。頂上からの360度の大パノラマは日本海までも見渡せる圧巻だ。
ただ、この季節2000m級の山は、良い天気だと小春日和だが、ひとたび天候が崩れると冬山状態になるのでご用心。
霧が上がりはじまると、小鳥たちの鳴き声がまた聞こえ始めた。シジュウカラ、コゲラ、アカゲラ、カケスがようやく姿を見せてくれた。
他にも鳴き声が聞こえるが何鳥なのか、初級鳥見人の私には判らない。でも、色々な音色で聞かせてくれるさえずりで心地いい朝だ。
そろそろ、お腹もすいてきたので戻って朝飯でも食べよう。
さあ、来月は小屋の冬支度に行かなければ、雪が来る前に・・・行けるかな