冬の足音

晩秋の森を歩いてきた。
既に紅葉黄葉の森は、色鮮やかな時期を過ぎ、今は名残の色を見せている。色あせてしまった葉は、もういらないとばかりに葉を落としてしまった木もある。逆に鮮やかな葉っぱを残しておきたかった木もあるだろうが、山の風にあおられて散ってしまった葉っぱは、地面にたくさんじゅうたんのごとく敷かれていた。

午前中は、暖かな小春日和だったが、寒冷前線が通過し寒気がやってきた。荒れるという予報だったが、一時的に急に雨がパラつき突風が吹いたくらいで、1〜2時間したら天気は回復し、大きく崩れることもなく、予想ハズレだった。

翌朝、近くの山々は時雨れてガスの中、時おりガスの切れ間から薄っすら雪化粧の山肌が見える。山麓を歩くと顔に冷や冷やするものがあたる。ガスっている空を見上げれば灰色の点点がフワフワ落ちてきた。風花が舞っているのだ!
今シーズンの初めての雪と思わぬときに遭遇した。

もうそこまで、冬はやってきていたのだ。

森の脇を通る道路を歩けば、カラマツの枯れ葉がパラパラと舞い落ちてくる。まだ木に残っている葉は、朝陽に照らされ黄金色に輝いていた。
黄葉紅葉は、ピークを過ぎているもののまだまだ十分楽しませてくれる。いろいろ歩き回ると、陽射しの加減でハッとするような鮮やかな色合いにも出会える。

陽射しの当たり具合といえば、光を透かしてみる紅葉黄葉もすばらしいものがある。人工ではありえない自然のマジックだ。それをカメラに収めたいと思うが、なかなか自分の目に映ったようには写ってはくれない。

夏に通ったときは緑のトンネルで鬱蒼としていた山道も、今は赤、黄色、黄土色、枯れ色へと変わり明るい山道になっていた。
色づいた木々の合間から山の姿が見えていた。今まで気がつかずに行き来していたのだ。辺りの風景が少し変われば普段見えていなかったものが見えてきたり、緑一色だったら写真など写さなかった風景も黄葉紅葉といった目線を少し変えてみると見えてくるというものが沢山あることに気がつく。
その山は、あまりにもありふれた、そこいらの山で、特別有名な名前などついていない山なのに、こういう機会を境に妙に気になる山となるのだ。

早朝の森を歩けば、小鳥たちの元気で、にぎやかなさえずりが聞こえる。ツグミの群れがにぎやかな朝食にやってきたり、ホオジロが澄んだきれいなさえずりを聞かせてくれた。
木をコツコツ、キョッキョッキョッ とアカゲラが忙しなく動き回る。他にも、やはり忙しないコゲラ、ゴジュウカラ、エナガなどが見られた。
静かな森では、小鳥たちのさえずりだけが朝の空気を震わせているようだった。

朝の目覚めとともに外へ出てみた。朝の陽射しが、まだ届かない小屋では、おそらくその日の最低気温を記録する時間だ。
このころ、森の向こうの山の斜面には暖かそうな朝陽があたっていた。
紅葉の山へ射しこむ朝陽は、赤々として、こちらの黒々した森とは対照的なコントラストを描き出していた。

やがて、陽が高く昇り辺りを一面に照らし始めるとカラマツの森は明るい森となった。
少し前の、色付きはじめたころのカラマツ林は、赤いツタウルシが黄色くなり始めたカラマツの木にまきついて、この色合いがきれいに目立っていた。
今は、カラマツの葉っぱが黄色いじゅうたんとなったカラマツの森は明るいけれど寒々とした森になってきた。

昨日、寒冷前線が通り過ぎた後は、寒気が入り込み、冷え込みの強い朝をむかえた。
山は、今時分よくある時雨れによってガスに覆われていた。

太陽の動きとともに、時雨れガスは動き続けており、時おり山肌が現れるが、なかなか山全体がみえない。

ガスの動きで見え隠れする山肌、そこには、薄っすらと白く雪化粧した姿が見えた。

朝陽が徐々に高度を上げていくと、時雨れガスの雨滴と陽射しが作り出す虹が現れた。
虹といえば夏とばかり思っていたが、よく考えて見れば、条件さえ整えば、いつでも起こりうる現象なのだ。

やがて、時雨れガスが晴れ上がってくると、朝の陽射しが雲を間に挟み山と森に射しはじめ、モルゲンロートがその山と森をいっそう赤く燃えさせ、輝いていた。

山肌のあちこちに吹き溜まった雪が白く見えていたが、この雪は、まだ今の寒気には負けない暖かい陽射しですぐに融けてなくなってしまうだろう。でも、根雪になる雪がやってくるのも、もう間近だろう。

風景というのは面白い。同じ地域から北の地域の方を見れば晩秋、そして白い山々を控えてもうすぐ冬が来るんだよ、といってきびしい冬の足音が、すぐそこに来ている様子なのに、反対の方を見渡す風景は、まだまだ秋だなんて感じさせないような、春の霞んだような様子にさえ思える景色だ。
こんな様子は、この辺りが気候の分かれ目を表す景色でもあるのだ。その傾向は冬型の気圧配置になったころ顕著に表れる。ここから北の方では冬型になれば、雪また雪の日々が続き、反対側は関東地方と同じく晴れ渡る。しかし気温は半端じゃなくかなり冷え込む。ここいら辺りからは、これからの冬の時期こんな景色が良く見られるようになって来る。
そんな冬の足音が聞こえてきそうだ。

小屋に備え付けてある寒暖計を見ると、最低気温は既に0℃を指し示していた。氷点下を記録するのも、もうすぐだろう。最高気温も10℃台前半を示していて、確実に冬モードだ。
今年は、これといった、冬支度はしなかったが外の風雨にさらされるベランダの塗装を昨年に引き続き塗った。そのほかには、昨年の1月、積雪150cmの雪を宝探しの如く掘り出した水道の元栓の在処を示す棒柱をしっかり立ててきた。あのアルバイトは生半可ではなく、大変だった。ここほれワンワンという訳にもいかず・・・  そして、水道の凍結防止のため元栓を閉めて、これでバッチリ!かな?
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  marutagoya  2005 Nov. 13 tama
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