翌朝、外へ出て見ると結構寒い。夜中に雨が降ったようだったが、全く気づかずに寝ていた。
見上げる飯縄山は霧に包まれて見えない。裾野の笠山は霧が上がっていく所だったが、見ると霧の後が白い…まさか雪?何度か目を疑ったが、やっぱり雪のようだ。積もるほどのものではなく、樹氷のように水滴が氷って付いたような感じだが・・・
まだ5月、山の天気はまだまだ冬の領域、標高にして300mくらいでこの違い。この辺りは新芽、若葉が出てきて秋の黄葉のような感じだ。

小屋の周りの草花も少しずつ花を咲かせ始めた。マイズルソウ、ベニバナイチヤクソウ、ツバメオモト、エンレイソウ、シラネアオイ、リュウキンカ、イワカガミ、コキンバイ、チゴユリ、ヒトリシズカなど、ようやく春が来たと言う感じだ。ヤマザクラなのかカスミザクラ分からないけれど終わりかけて、多少付いていた花びらがヒラヒラ落ちてきた。

まだ、芽吹き始めたばかりの遅い春が来た森を歩いた。1ヵ月前は、まだ残雪が1mもあったのに、今はもう無い。この1ヶ月は1年のうちでも、もの凄い活動期なのだろう。気象的にも、動植物的にも。

植物は、雪の下から芽吹き時を今かいまかと待ち、一斉に花を咲かせ将来へ子孫を残そうと懸命な生長を見せていた。それは私達人間の目にはきれいに花が咲いた、というだけで見ているが植物達は必死なのだろう。

野鳥達も同じだろう。南から渡ってきた夏鳥たちが、この森へ来て囀り、歌い伴侶を得て、やはり子孫繁栄に向けて懸命だ。やはり私達は、そのさえずりを心地よく聞き、きれいな姿を目にして、ただ楽しんでいるだけだが、彼らは、命がけのことなのだ。

やっと春が訪れた森では、動植物が活き活きそして生き生きしている。人間は、それらを見て楽しませてもらっている。

少し進むと植物観察園には、赤い石楠花が咲いていた。他にはまだ花は無かった。更に進むとカラマツ園地の交差点だ。その脇の広葉樹からウグイスの鳴き声が聞こえた。直ぐ近く5mくらい先に視認、枝を伝わりながら歌っている。歌声に引かれついつい姿を探してしまうが、最近思うに、ウグイスに関しては、姿を探さないで歌声だけを楽しんだ方がいいような気がする。

1本のカラマツの黒い幹から新緑の枝が出ているところで営巣中のエナガのカップルを見つけた。そんな所に巣があるなんて、気がつかずに上を見ながら歩いていると、エナガが周囲の枝に止まっては飛んだり、繰り返していた。それを双眼鏡で見ていたので、人間を警戒していたのだろう。いやに2羽が飛び回るので、木陰へ隠れて様子を見ていると、カラマツの枝の付け根辺りへ行く。それを双眼鏡で追ってみると、巣らしきものが見えて、卵でも抱いているように座り込み、しばらくするともう1羽が来て交代、又座り込む・・・やっぱり抱卵中なのかもしれないので、そこを離れた。
園内の木道を歩いていくと、5、6人から10人くらいの固まりで、今流行?の中高年の団体が歩いてくる。おしゃべりをしながら、それも驚くほど大きな声で、静かな森の中のはず、それほど大きな声で話さなくてもと・・・やかましい!! 鳥の鳴き声でも聞きながら歩けないものかと・・・。
木道をはずれて、あまり人が通らないカラマツの小道へ入ってみた。高木のカラマツ林が続く高台だ。ここからも下を通る木道からの話し声が聞こえるが、それほど気にならない。静かだ。

日が延びたといっても午後は夜に向う。早く目指す戸隠森林植物園へ行こう。
到着すると平日にもかかわらず、駐車場は半分くらい駐車していた。それでも、みどりが池辺りは人影はまばらだ。池の林に近い方側には水芭蕉が綺麗に咲いていた。

池をグルッと回り歩いていくと、木道脇の低い枝にキビタキが現れた。近づいても木道へ降りたり、近くの枝に移ったりとそれほど遠くへ行かない。気に入った自分の縄張りに決めた場所なのだろう。

行ってみると菜の花もまだ出始めのような感じで、三段畑になっているが下の畑は、菜の花が咲いているものの上の段は菜の花はやめてそばだけにするのだろうか何もなく雑草だけだった。。
おなじみの風景は、森の頭越しに戸隠西岳連峰が延び、真ん中にポッコリ一夜山、その奥には北アルプスが、まだかなりの量の残雪が白い。

やはり晴れて真っ青な空と、白い山、新緑、黄色い菜の花畑となれば理想的な風景だが、そういう良い時はなかなか無い。この日も薄曇が広がり始めていた。

バードラインを走り戸隠へ向かったが、途中のそば畑(今は菜の花)からの景色が気になり寄ってみた。春は菜の花、初夏と秋はそばの花でいっぱいになり、背景の戸隠連峰との写真やポスターでちょっと知れ渡っている場所だ。でも、午後は逆光になるので北アルプスの眺めは霞んでしまう。やはり早朝が良い場所だ。それでも、気になる。

カラマツ園地の交差点を突っ切って、戸隠神社奥社参道の隋神門から天命稲荷へ通じる小道へ続く道を進むと、ここの森は小鳥が多いエナガ、コガラ、シジュウカラ、ゴジュウカラ、キバシリ、モズ、アオジ、アカハラ、ウグイスなどツツドリのポッポポッポという鳴き声も聞こえてくる。ホトトギス、オオルリ、コルリは鳴き声のみだ。でも、ここでサンショウクイに出会えた。

さらに進むと水芭蕉、リュウキンカが咲く湿原地へ出た。この辺りは結構奥に入るので静かな所だ。しばらく花見をしながら鳥の鳴き声を聞いていると、相変わらず中高年の団体が来る。こんな奥までと思うが、今時の年寄りは、ヘタな若者より確りした足どりなのだ。
一団が通り過ぎれば静かだ。もう3時半を過ぎていたので、人影もなくなってきて、一頻り静かな中で鳥の鳴き声、風の音をしみじみと聞いた。

でも、そろそろ引き返さなければ…奥方に怪しまれそうだ、ゆっくり辺りを見ながら、聞きながら歩き出した。

一休みして、早速戸隠へ行こうと外へ出ると、聞きなれないさえずりが聞こえてくるので、その方を見上げるとコサメビタキらしい小鳥が見えた。めずらしい?ここでは初めてだ。
車に乗って動こうとしたら、今度は地面を黒いものが走るように動いていくのが目に入った。慌てて車から降りて、動いていったほうへ双眼鏡を向けると黒い鳥がいた。
お腹あたりは白く、ひょっとしてクロツグミ?何と言っても遠い20mくらい先にいる。これは初めて見る鳥なので、とりあえず写しておいて、調べてみることにした。夜、図鑑と写真を見比べると、やっぱりクロツグミだった。
初めての鳥だったので飛び立って行くまで、木陰からじっと双眼鏡で観察していたので、15分くらいも費やした。

夜明けが早くなり、日が長くなったこともあるけれど、昼までに現着すれば、午後の時間を有効に使えると思ったからで、と言うのも同行の奥方が午後は長野市内で用事があり、夕方まで時間がかかるので、なお更午後の時間を自分のものにしようと、ちょっと欲張ってみたのだ。

そんな訳で、いつもながら車窓の移り行く風景を見ながらのドライブで、昼には飯綱に到着した。
いい天気で、小屋に着くとこの日はアオジのチョッピーチョ チチクイチリリ チョッピーチョ チチクイチリリと歓迎の歌声でお出迎えだ。
3月、4月はゴジュウカラの単調なフゥィ− フゥィー フゥィーだったが、今回はテンポが良い歌うようなアオジのさえずりだ。その歌う姿も体全体で一生懸命だった。それと相変わらずのウグイスたちの歌声がいくつか聞こえていたけれど、春先より上手に歌っているようだった。


昨年の今頃は、朝から晩まで、それも毎日アカハラが歌い続けていたけれど、今回はヘタな鳴き声を一度だけ早朝に聞いたけれど、それから聞いていない。どうしたのだろう。

やっと春が訪れた森

いつも高速道路を走っていくと、季節が少しずつ移ろっていく様子が分かる。その移り変わりは地域差があり、それも夏や冬のようにしっかり決まった季節とは違い、春は躍動感があり変わり方が激しい季節だ。
先月行ったときからちょうど1ヶ月、また関越道、上信越道を乗り継いで信州へ向かった。

東京近辺から関東平野を通過する関越道沿いの風景は、新緑が落ち着いて濃い緑色に変わってきて、夏にかけて一層濃さが増しているようだ。上州から信州へ碓氷峠にかかる山あいに入り、トンネルをぬけて信州に入ると、しばらくぶりに、あの萌える新緑がもどってきた。

いつもは、ゆっくり出て平日の高速道をチンタラ走って行っていたが、今回は、少し早めの出発だった。

山にも春が訪れて、雪融けとともに現れる雪形が見え始めた。この五竜岳にも見える武田菱。その他にも北アルプスの山々には色々な雪形が見え始め、これを期に農作業を始める時期だとか…山麓に住む人たちは、生活の目安にしている、という。

ちょっと足を延ばした谷あいの河原で見かけたカワガラス。彼らも繁殖期なのか2羽が川沿いに追い掛け回すように飛び交っていた。

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marutagoya  2008 May 29  tama
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