いつものとおり、荷物を運び込み掃除をして、落ち着いたらもう7時近くになっていた。外はすっかり夜の帳が下りて暗くなっていた。でも空を見上げれば、山や樹木の影は黒く一色だが、空はそれらに縁取りされて白んでいた。ちらほら星の瞬きも見えるようになってきた。気温は下に比べれば格段に低いはずだが、日暮れても下がり方が鈍く山にしては暖かく15℃くらいだ。
この日の夕食は、着くのが遅いだろうと予め買ってきた、峠の釜飯を食べた。飲み物とちょっとした惣菜といった簡単なものだった。翌日は、私は飯縄山へ登ることにしていたし、奥方は長野の街で用事があったので午前中は別行動。
過ぎ行く夏の森
厳しい暑さが続いた今夏だったが、ようやく秋の気配がしてきた。暑さを逃れてというなら、もっと暑い時期に行きたかった飯綱だったが、そんな訳にもいかず9月になってしまった。でも、長野市街地の暑さは、東京と然程変わらず暑い、でも違うのは、風が冷たいし、日陰に入ると涼しいことだ。これだけでも、来て良かったと思う。

さて、そんなまだまだ暑い日に信州へ出かけた。昼すぎに家を出て関越道、上信越道を走り4時頃長野へ着いた。平日は、高速道路も空いていて楽に走れていい。買出しをして、山へ上がっていく。まだ、9月の半ばだから夕暮れは、それほど早くないがそろそろ黄昏が訪れようとしていた。
いつも来ると朝夕、この飯縄山麓を散歩して歩くが今日も歩いた。小屋を出て笠山のすぐ下を通り過ぎていく。この辺りにも春からずっとウグイスが居るようで、今もジッジッジッジッと地鳴きが聞こえた。少し歩くと飯縄山が見えてくる。木々の間から頂上部分だけ少し顔を出す程度だ。そして振り向くと、やはり木々の間から、どこの山かと思わせるほどの岩肌を覗かせる戸隠山の一部が見える。さらに歩くと飯縄山がスポッと見えた。
奥方が、涼しくなってきたから帰ろうというので、引き返すことにして、お散歩は終わり。
昼前には、飯縄山から下りてきたので、まずは風呂で汗を流し、着ていたものを全部洗濯をした。山は登っている間も、下りてきてから見上げても依然ガスがかかっていた。小屋の辺りは天気が良くなって木漏れ日が気持ち良い。洗濯物を木と木の間に張った物干し綱に干して、小屋の森を歩き回ると夏の名残の花たちが、いっぱい咲いていた。アザミに舞って来たアサギマダラがきれいだ。
春先から、この森に来ていたキビタキの姿は見れなかったが、まだ居そうな気配はしていた。時折鳴き声が聞こえるのだが、キビタキのようでそうでもないような・・・同じくここに居るウグイスは、ジッジッジッジッという地鳴きをしている。

そうこうしている間に奥方が帰ってきたので、昼飯のそばを食べに戸隠へ向った。今回は、ずっと前に行った事があった店で、中社から奥社へ向う途中の「そばの実」だ。ここは、広い窓から見える外の緑がすばらしく、美味しいそばをいただいた。そば団子も美味かった。
午後からは、小屋でゆっくり、のんびりタイムだ。今回は、東京の暑さから逃げ出したくて来たので、それほどあちこち行くという予定もなく、私は飯縄へ登れたら登りたいなぁ〜、ということだった。

小屋へ帰ってから、奥方はやっぱり眠いとお昼ね!私も窓越しに外を眺めながらウトウト・・・でも、外の音が気になる。さっきからコツコツ木を突っつく音がしている。この庭の森には住み着いている?キビタキ、ウグイスと時々やってくるアカゲラがいる。そのアカゲラが来たようだ。
ここの庭は、なるべく今までのままにしておいて、手を加えないようにしているので、庭中草花が生えている。花もいろいろ咲いている。そんな花たちを見て歩くのも楽しい。春にもらってきたクリンソウは根がついたようで、枯葉にはなったが、しっかりしていた。来春の開花が楽しみだ。タマアジサイもしっかり根付いていた。

この敷地内には、ベニバナイチヤクソウの小群落とともに、ツルリンドウも多く生えている。夏の内は、ツルの先に紫の花を咲かせていたが、今頃になると赤い実になる。そろそろ赤い実が目立ち始めた。
窓越しに見えたので、外へ出て見ると高いところの枝を、チョコチョコ忙しなく動き回っている。この時期は、まだまだ葉っぱが生い茂っていて、小鳥を見つけるのは大変だけれど、少し慣れてくると、けっこう小鳥が動き回っている。良く見れば、キビタキのメスらしい姿が目に入ったので双眼鏡で追っていくと、確かにキビタキだ。でも鮮やかなオスの姿は全く見えない。

春や夏の間、綺麗な鳴き声を聞かせてくれたキビタキだったが、今はほとんど鳴かない。朝方、鳴き声がしいていたが、わずかの間だけだった。しばらく庭を歩きながら、姿を追っていたが見えなくなった。この森に居るとはいえ、やはりこの周囲を飛び回っているようだ。
こんな良い避暑地を知りながら、今夏のいつにない暑かった夏を東京で過ごしたなんて、ちょっと自分でも信じられない。我が家の8月は、エアコンの稼働率がものすごく高かった。今までは、日中でもエアコンを使用する日数は数日程度だったが、今夏は昼夜連続運転の日が何日か、たぶん1週間以上はあったように思う。7階なので風通しは良いけれど、日中は熱風といった感じだった。夜は寝苦しいからエアコンと・・・だから電気代もいつもの月の3倍くらいになった。

そんな夏も、ここ飯綱ではやっと過ぎていく気配だ。植物は盛りを過ぎ、花を咲かせていたものは実をつけ始めたり、青い実だったものが色づき始めたり、枯れかけたものになりつつある。森を見れば、まだまだ、青々しているが、登って来た飯縄山では、早い木では紅葉や黄葉が始まっていた。そして、あと一ヶ月もすれば、この辺りは紅黄葉が始まっているだろう。

この夏は、何だったんだろう・・・今になって、思い起こせば夢だったのではないか・・・なんて・・・・
世の中というものは、そうそう自分の思い通りにはならないものだと、改めて思うが、こうして過ぎていく夏をここで見て、感じる、そんな今回の飯綱だった。
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marutagoya  2007 Sept. 25 tama
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