日本一の高さを誇る富士山は、典型的なコニーデ式火山で、いずれの方向から眺めても円錐形の均整のとれた姿は美しい。
昔の富士登山は白装束姿で、麓の富士宮浅間神社から、数日掛けて歩き通したそうだ。今では、富士スバルラインが通り、五合目までは車で簡単に行けるので、富士登山も日本一の高山にもかかわらず、老若男女が軽装で雲上の人となれる身近な山となった。

日本一高い山、遠目に見える美しい山であれば、一生に一度は登って見たいと誰もが思うだろう。
富士山は7月1日をお山開き、8月31日を山じまいと呼び、7月、8月の2ヶ月間が富士登山の時期だ。
山小屋が営業を始めると、日本各地や外国の人々が3776ｍの山頂を目指して遣ってくる。夏休みに入り、梅雨明け頃から8月のお盆頃までは、登山道が渋滞し山小屋からは人があふれるほどになる。そんな光景は、毎年報道される。今年はコロナで、そんな光景は見られなかったようだが・・・。

そんな、富士山に一度は登ってみたいと思った訳では無かったが、山岳会の冬山トレーニングの一環として、若い頃一度だけ登った。登山シーズンは終わってしまった冬山シーズン12月。
その登山の時や夏山シーズンの時を思うと、富士山は登る山では無く、遠くから見る山だなぁ～という実感がした。
今では環境問題等で綺麗になっているだろうが、あの頃のシーズンオフの富士山の山肌は見られたものでは無かった。あの時は、今冬と同じように12月としては雪が少なかったように思う。

我が家のベランダからは、天気が良ければいつでも富士山の姿が見える。だが、昨年の初雪、初冠雪以来見る度に、雪が少ないと感じていた。ニュースでは、9月28日富士山の初冠雪が見られたと報道された。平年より2日早く、昨年より24日早い観測だと。
でも、それより前の9月21日、富士山で初雪が見られたようで、1ヶ月くらい早いそうだ、という報道があった。その日は、曇っていて我が家からは見えなかったが、数日後に見ると白くなっていて、初雪だった。
初雪が降ったと言っても、気象台が目視で確認しないと、観測上の（初雪）初冠雪にはならないようだ。

梅雨に入り7月8月は、富士山を見ることが出来なくなる。少し涼しくなり始めた9月、やっと富士山が見え始めると、山肌は黒々して雪は見えない。一番雪の少ない時期だ。
そして、暑さ寒さも彼岸までと言われるように、彼岸過ぎには初雪が見られ、9月28日には初冠雪が見られた。

初冠雪後は、上部全般に白くなったので、これから本格的に白くなるかと見ていると、10月下旬には薄らとしてきて8～9合目くらいまで、それより下は地肌丸出しで、11月下旬まで雪の少ない状態が続いた。
12月の初旬には一面白くなったが、中旬過ぎにはまた黒々してきた。中旬は寒波の影響で日本海側は平年より雪が多く、群馬県みなかみ町藤原で291センチもの積雪があったが、富士山は黒々していた。
年末の大寒波では、日本海側だけで無く、富士山も久しぶりに裾野まで白くなった。

今冬どうして富士山の雪が少ないか？
我が家から眺める富士山の雪が少ないと思っていると、SNSなどでも雪が少ないと心配事が書かれていた。
そんな声は以下のようなものだ。

＜全国各地で大雪の被害が相次いでいたのに、富士山だけ雪が積もらないのは不自然だ。＞
＜雪が積もっていないし、不気味ですね＞＜富士山の雪が少ないのと地震が関係ないことことを祈る＞＜富士山噴火するの？雪が溶けてるって怖すぎ＞

こんな声に、気象庁の担当者は　＜確かに例年に比べ、富士山の雪が少ないです。でも、地震や噴火とは関係ありません＞　と答えている。
結局原因としては、昨年11～12月の降水量が少なく、観測開始以降で最少の降水量。降水量減少に伴い、降雪量も減っているらしい。それに、今冬は日本海側は記録的な豪雪となっている一方、太平洋側では低気圧の影響が無く、晴れの日が続き、例年より冠雪が少ないようだ。
また、風の影響も大きかったようだ。富士山に降る雪は、この辺りで降る雪と違い、パウダースノーで軽くサラサラ。富士山で吹く風は、標高2000ｍ地点で20mでも、3000ｍになれば30ｍと強風になり軽いパウダースノーは吹き飛ばされてしまう。

結局、心配していた噴火や地震では無く、気象状況が例年と違っていたことだったのだ。