飯綱山(飯縄山)は、長野県北部(北信地方)、長野市・上水内郡信濃町・飯綱町にまたがる山。
飯縄山と、その支峰・霊仙寺山(れいせんじやま)、戸隠スキー場の瑪瑙山(めのうやま)などからなる連山を飯綱山という。
戸隠山、黒姫山、妙高山、斑尾山とともに、北信五岳のひとつの山だ。

飯縄山は、長野市の最高峰で市民の山として親しまれている。この山にはピークが二つあり、南は飯縄大権現神社が奉られている。北にあるピークが本峰でここに三角点がある。

孫と初めての飯綱山登山

長いコロナ禍、そして長かった今年の梅雨が、8月に入った途端に、やっと明けて、真っ青な空が広がった。
昔から梅雨明け10日と言うが、梅雨が明けた後の10日間は安定した晴天が続くことが多いので、この頃が夏山登山に最適な時期なのだ。

前々から孫がもう少し大きくなったら、山へ連れて行こうと思っていた。今年は春先から休校が続き、家に閉じこもっていた期間が長かったので、夏休みになったら山へ行くかと聞くと、「行く」というので、3年生になった孫と初めての登山が実現した。
最初の山は、私が何回も登ってよく分かっている長野の飯綱山、標高1917mにした。

山頂からの展望は晴れていれば、北は日本海から佐渡ヶ島、東に新潟の山々から志賀高原の山々と浅間山、南に八ヶ岳から中央アルプス、富士山まで見える。西にはすぐ近くに北アルプス白馬連山、遠くに南部の槍ヶ岳・穂高連峰までの峰々が、眺望は360度で遮るものがない。
2020 Aug.. tama
back to Nature Info
天候も安定した、山の日の前々日に登った。
孫には、事前に遠足の時に渡す様な、持ち物や注意を書いた予定表とイラストの登山道を書いた紙を渡して置いた。

今回は、幾つかある登山道のうち、南登山道から登った。
午前6時、山小屋出発の予定だったが、45分遅れの出発となった。
山小屋から登山口まで15分、いよいよ登山開始だ。
飯綱大明神の鳥居をくぐって登山口を出発。(07:10)

小さな鳥居をくぐり抜け、カラマツ林の登山道を歩き始める。歩き始めて10分も経たないうちに、孫がちょっと休みたい!えっ!?もう? 普段の行動から、やっぱりダメか?と、少し休み、また歩き始めた。今度は道端にいたカエルを見つけ、歩を止めた。こんなところにもカエルがいるんだと・・・

カラマツ林の緩やかな登りを少し歩くとまた鳥居をくぐる。その左側に小さな不動明王の石仏があった。第一不動明王の石仏だ。
この登山道の脇には、登山口から全部で13の石仏が置かれている。十三佛縁起と書かれた立て札があり、謂われが書かれていた。

注) 十三仏の説明は、一不動の脇にあった「十三佛縁起」の案内板より
    十三仏とは、死者の七十七日の至三十三回忌を司る仏なり。当飯綱山参道に我が九世端応聖麟和尚道標として、
    一不動 より十三虚空蔵に至る十三仏を建立し、現世未来の道標としたるは誠に卓見にして仏意を得たるものというべし。
    ちなみに、十三仏は、次のとおり。
    @不動明王 A釈迦如来 B文殊菩薩 C普賢菩薩 D地蔵菩薩 E弥勒菩薩 F薬師如来 
    G観音菩薩 H勢至菩薩 I阿弥陀如来 J阿ゆら如来 K大日如来 L虚空蔵菩薩

最初の10分で、今回はもうお終いか?と思ったが、十三佛の第一不動明王の石仏が出てきたことで、この先頂上まで13の石仏があるんだ、と・・・少し張り合いがでてきたのか、次は第二だね、と歩き始めた。エネルギー10パーセント回復したなど、軽口をたたき始めてきたので、これで良しと少々安心。

歩いて行くと後から女の人が一人で登って来た。そして追いついて来たので道を空けて、先に行ってもらった。
我々はゆっくりゆっくりだからね。すると、ウサギとカメだね。そうカメのようにゆっくり歩いて行こうと・・・また歩き出した。
5分ほどで、最初の水場に到着。(8:10)
雪解け水や雨水が地中に滲みこみ、それが細い流れとなって沢すじから湧き出てくる。澄んだ水は冷たく、すくって飲むと美味い。

子供の頃、祖母から聞いた話で、山へ行ったり、知らない土地へ行って、慣れない水を飲むときは、いきなり飲み込まず、口に含み唾液と混ぜてから飲み込めば、水に中たらないと言っていた。そんな話を孫にも話して聞かせた。

最初の水場から数分で、次の水場「富士見の水場」だ。富士見って何?と聞くので、この辺りから富士山が見えるんだと、でもこの日は霧が出て遠望が利かなかった。
ここまでは、尾根道をだらだらと登って来たが、ここからは本格的な登りとなる。
駒つなぎの場からは、斜面を横切るようにして折り返しながら徐々に高度を上げていく。でも、斜めに行くのでそれほどきつくは感じないが、後を振り返ると意外と急な坂道に驚く。

駒つなぎの場

第一石仏から次は第二、第三・・・とどんどん数えながら歩き、時には無事に登れますようにとお祈りをしながら、第十一阿ゆら如来が奉られている「駒つなぎの場」まで来た。(7:55)

途中の第八観音菩薩を過ぎる頃、既に早朝登って下りてくる人に出会った。孫はこんなに早く?と怪訝そうだったが、夏の山登りは午前中に行動するのが原則だと話した。

ここは、6畳ほどの広場になっていて、昔はこの辺りに馬をつないで一服したのだろう。

ここで一休みしていると、2人目の下りて来る人に出会った。
こんにちわ、と孫。
今度の人は、おじいさんで、5時頃登って下りてきたという。「じいさんは、朝が早いから」早朝に登るんだと言っていた。
孫に、あんたのじいちゃんは何歳だい?俺は78だよと・・・そして、また出発!(8:05)

水場を過ぎると、登りは一段ときつくなってきた。
大きな岩場を通り抜けたりしながら登る。この辺りには、この登山道で1カ所だけ鎖場がある。でも、鎖に頼るよりも岩に手を掛けて登る方が安全なので、手の位置、足の置き場を指示しながら登った。

急な登りが続き、疲れた〜が多くなってきた。その度に頂上に着いたらラーメンを作って食べよう!そうだラーメンを食べるんだ!と、また元気に登る。

駒つなぎの場までは、十一の石仏が簡単に見つかったが、十二・十三が見つからない。十二が無いね、探しながら歩いて来ると、「天狗の硯岩」に到着した。(8:25)

“天狗の硯石”は、2.5m×2m位の大きさで真ん中が少しえぐれたようにへこんでいて、大きな硯のようだ。
硯石の上に立ってみると、あの高鼻の天狗が一本歯の高下駄を履き、天狗のうちわを持ち、ここから下界の様子を見ていたような気がする。ここから眼下には長野市街が広がり、南東には大座法師池が見えるはずだが、この日は霧が出ていて、何も見えなかった。

すっかり高木が無くなり、クマザサの中に高山植物や花が沢山見られるようになった道を上っていくと、戸隠の中社から登って来る西登山道との分岐だ。
この辺りでは、すっかり霧に覆われ視界は数十メートル。でも、時々霧が流れて麓の池が薄らと見え隠れしていた。


西登山道は道程は少し長いが、比較的緩やかな登りなので、最初の山登りなので、このルートも考えたが、私自身ここは1回だけ、中学生の頃通って、ダラダラ登る道であまり好きではないし、小屋から戸隠の中社まで、車で行かなければならなく時間のロスもあるので、いつも登っている南登山道にした。

このあたりが一番つらい登りだ。視界が開け頂上方向には南峰直下の鳥居が見えてくるのだが、この日は霧で全く見えない。
戸隠連峰の最高峰高妻山が、大空に三角錐の穂先を突き上げている様もこの辺りから見えるのだが、やっぱりダメ。
そんな風景が広がれば、それらが応援してくれるので頑張れるのだが・・・。

高山植物や花が、登山道の左右にいっぱい咲いている。霧が無ければ、この辺りから、南峰直下にある飯綱大明神の鳥居が見えて来るのだが・・・と思っていると、霧の中から鳥居が見えてきたので、孫にもう登りは終わりだ、と・・・
鳥居を左に見て少し登るとあっという間に南峰の頂上に到着だ、1906m。(9:00)

南峰の頂上にもお地蔵様があり、それを見ると、これが第十三番目? 十一番を出発して次の十二番が見つからず、どこだどこだと言っているうちに、登りがきつくなってきて、石仏のことはすっかり口に出なくなったが、このお地蔵さんで、十二番、十三番のことを思い出した。

でも、そこには第何番という立て札が無かったので、これは十三番じゃないね、と。じゃあ十二番、十三番はどこなんだろう?

北峰(本峰)への登山道から一段右下の見晴らしのいい場所には、赤い屋根の飯縄神社の社が祀られている。
社の前から目前にパノラマが広がるはずだが、この日は霧で遠望はきかない。
晴れていれば、信越境の山々から志賀高原、菅平の根子岳、浅間山や上信境の山々が見えるのだが、仕方ない。

神社まで下りて、一応ここまで無事に登って来たことのお礼参りをした。

南峰から頂上までは、一旦鞍部へ緩やかに下りて、もう一登りしなければならない。

鞍部へ下りると、何年か前に、この辺りにトイレができた。排尿、排便等で地下水の汚染が進み、環境破壊や山野草や動植物の生態系のバランスが崩れないための措置らしいが、これも大変なことだ。

よく山へ行っていた昔は、普通にその辺でオハナツミ、キジウチといってしていたけれど、時代とともに変わってきたようだ。


頂上へ続く笹薮の道を歩くと、アザミやワレモコウがいっぱいだ。
ウグイスの鳴きがずっと聞こえている。春先には麓で鳴いていたウグイスが、今では山の中腹辺りから鳴いていて、頂上までも上がってきているようだ。登りながらずっとウグイスの鳴き声が聞こえていて、すぐ近くで気配を感じることもしばしばだ。

最後の一登りをしたら、霧の中に飯縄山山頂1917mと書かれた標柱が見えてきた。
頂上に着いたらラーメンを作って食べるんだ〜を繰り返し、やっとその目標が達成され様としていた。


孫もやっと着いた〜!じゃあ、標柱にタッチしてと、タッチ!(9:20)

ジイ早くラーメン作って!
汗で濡れたシャツは、活動を止めた途端寒くなって来たので、上着を着させ、すぐにガスバーナーで、お湯を沸かし始めた。

お湯を沸かしている間に、高い山に登ると水が沸騰する温度が低くなると言うことを説明したが、そんなことは分かるはずも無い。
気圧が低くなるため水の沸点(沸騰温度)もが下がる。

標高2000mではお湯は93℃までしか上がらないので、この飯縄山では95℃位かな?

そんな話しをしているうちにお湯が沸き、早速カップラーメンに注ぎ、数分待って、この日のメインイベント、飯縄山の山頂でラーメンを食べるが、実現した。

この話は、山へ行くか?と聞いたとき、何を持って行くの?何を食べるの?などいろいろな質問があったときから始まっていたのだ。


天気もあまり良くなく、じっとしていると寒いので、ラーメンを食べ終わると早速下山だ。(9:55)

頂上から先ほど来た道を、まず鞍部へ向かって下り、南峰へ登る。程なく南峰へ到着。(10:10)
南峰では、赤とんぼが沢山飛んでいたので、孫はこの指に止まれと、指を立てていたが止まってはくれない。

南峰の標柱を右手にお花畑の道を下り始めた。下山していく登山道を見下ろすと、その周辺は笹薮や草野原で、お花畑になっている。
でも、登山道は急で不規則な石段状になっている。上りでは、気にならなかったが意外なほど急な坂道だ。
そんな中、少し下がった草原のような場所が、戸隠中社と一の鳥居への分岐点だ。

分岐点を過ぎ、比較的見晴らしの良い尾根道を下り森林帯へ入ると、間もなく「天狗の硯岩」だ。約30分で下りて来た。(10:40)
この下りでは、傾斜が急なので何度も転びそうになる。
上りに気がつかなかった十三番目の石仏、最後の「虚空蔵菩薩」が、天狗の硯岩の手前にあった。

登ってくるときも周りを見ながら、草花を見ながら来たはずだったが、視点が変わると見えてくる草花も違って見えてくる。

天狗の硯岩を出発。ここから下は、草つき尾根を横切りながらのジグザグ道を下る。
花がたくさん咲いている草薮を下ると、水場。その手前に、上りで見つからなかった十二番目の大日如来があったのだ。
孫は、上りに見つけられなくて ごめんなさい と大日如来にお参りをした。

最後の草つきの斜面を横切る長い道を下る。何回かジグザグに折れながらの下り道、もう少し、この突き当たりは「駒よせの場」だ。急な坂道は終わったので、ここで一休み。〔11:20〕

駒よせの場では、団体の登山者がガイドさんの説明を聞いていた。ここの謂われについて話しのようだった。
さて、一休みしたので、後は尾根道をどんどん下るだけだ。と思って気楽に歩き出したのだが、 この頃になってくると孫が転んだり、転びそうになったりしてきたので様子を聞くと、どうも下山時に足の疲れが出てきたようだった。
痛い訳でなくだるく…足の力が抜けてくるような感じらしい。


私は、下山時に足が疲れてきて”膝が笑う”現象をよく体験した。
痛い訳でなくて、だるく…膝の力が抜けてくるような感じ…形容しがたい・・たぶん、そんな感じではないだろうか。

先頭にたって歩いていたが、何回か転んだので、私の後について私が置いた足跡に足を置きながら歩けば・・・と、私のザックに手を掛けて、後から私の足跡を踏みながら、順調に下山。


登山口に無事到着。(12:00)
やっぱり子供、登山口に着くと今までの”疲れた〜”はどこへ行ったのか?途中では、ジジ車を取りに行って迎えに来て、なんて言っていたのに、小屋まで歩いて行けるよ!だって!?
この後、登山の話しをしながら、ゆっくり歩いて小屋まで戻り、汗を流しに近くの温泉へ行った。

一休みすると、元気良く歩き始めた。ここからがいよいよ急登。それも露出した石と黒土で滑りやすい急斜面。
標高が1774mになって、高木が減りクマザサや低木で視界が開ける。そろそろ森林限界だ。飯縄山のような標高1917m程度の山だと頂上直下100mくらいが森林限界なのだろう。高山の短い夏、花が沢山咲いていた。

森林限界について説明したが、ピントこなかったようで、孫は、こうした自然の変化にはまだ興味を示さなかった。登ることで精一杯の様だった。

約5時間に及んだ、孫との初めての登山。
楽しかった山旅、事故も無く終わってホッとした。
子供だから転んで怪我でもしたら、背負って下りなければ・・・なんてことも考えていたが、そんなことも無く元気で下山できたことが何よりだった。

全般に振り返えると、特にすごく疲れたとか、もう嫌だと言うことも無く順調な登山だった。
これは、今回のような、曇り空で少し涼しい天候だから、あまり体力を使わずに登れたのかとも思う。

残念だったことは、晴れている時、頂上からの360度の素晴らしい眺望を見せてやれなかったことだ。

この登山を通して、行き会う人と”こんにちわ”と声を掛け合えるようになったこと、後から来る人に道を譲ること、登山では上り優先なので、下山中登って来る人がいれば立ち止まって道を譲るなど、日常の生活の中でも生かせる体験が出来たと思う。

さて、この次登山に誘ったら、何て返事がくるのだろう?

第十三 虚空造菩薩

第十二 大日如来

最初の水場

富士見の水場

HOME
第十一 阿ゆら如来

番外 馬頭観音

第十 阿弥陀如来
第九 勢至菩薩
第四 普賢菩薩
第三 文殊菩薩
第二 釈迦如来
第一 不動明王
第八 観音菩薩
第七 薬師如来
第六 弥勒菩薩
第五 地蔵菩薩
inserted by FC2 system