飯綱山(飯縄山)は、長野県北部(北信地方)、長野市・上水内郡信濃町・飯綱町にまたがる山。
飯縄山と、その支峰・霊仙寺山(れいせんじやま)、戸隠スキー場の瑪瑙山(めのうやま)などからなる連山を飯綱山という。
戸隠山、黒姫山、妙高山、斑尾山とともに、北信五岳のひとつの山だ。
飯縄山は、長野市の最高峰で市民の山として親しまれている。この山にはピークが二つあり、南は飯縄大権現神社が奉られている。北にあるピークが本峰でここに三角点がある。
孫と初めての飯綱山登山
長いコロナ禍、そして長かった今年の梅雨が、8月に入った途端に、やっと明けて、真っ青な空が広がった。
昔から梅雨明け10日と言うが、梅雨が明けた後の10日間は安定した晴天が続くことが多いので、この頃が夏山登山に最適な時期なのだ。
前々から孫がもう少し大きくなったら、山へ連れて行こうと思っていた。今年は春先から休校が続き、家に閉じこもっていた期間が長かったので、夏休みになったら山へ行くかと聞くと、「行く」というので、3年生になった孫と初めての登山が実現した。
最初の山は、私が何回も登ってよく分かっている長野の飯綱山、標高1917mにした。
注) 十三仏の説明は、一不動の脇にあった「十三佛縁起」の案内板より
十三仏とは、死者の七十七日の至三十三回忌を司る仏なり。当飯綱山参道に我が九世端応聖麟和尚道標として、
一不動 より十三虚空蔵に至る十三仏を建立し、現世未来の道標としたるは誠に卓見にして仏意を得たるものというべし。
ちなみに、十三仏は、次のとおり。
@不動明王 A釈迦如来 B文殊菩薩 C普賢菩薩 D地蔵菩薩 E弥勒菩薩 F薬師如来
G観音菩薩 H勢至菩薩 I阿弥陀如来 J阿ゆら如来 K大日如来 L虚空蔵菩薩
駒つなぎの場
第一石仏から次は第二、第三・・・とどんどん数えながら歩き、時には無事に登れますようにとお祈りをしながら、第十一阿ゆら如来が奉られている「駒つなぎの場」まで来た。(7:55)
途中の第八観音菩薩を過ぎる頃、既に早朝登って下りてくる人に出会った。孫はこんなに早く?と怪訝そうだったが、夏の山登りは午前中に行動するのが原則だと話した。
ここは、6畳ほどの広場になっていて、昔はこの辺りに馬をつないで一服したのだろう。
ここで一休みしていると、2人目の下りて来る人に出会った。こんにちわ、と孫。
今度の人は、おじいさんで、5時頃登って下りてきたという。「じいさんは、朝が早いから」早朝に登るんだと言っていた。
孫に、あんたのじいちゃんは何歳だい?俺は78だよと・・・そして、また出発!(8:05)
水場を過ぎると、登りは一段ときつくなってきた。
大きな岩場を通り抜けたりしながら登る。この辺りには、この登山道で1カ所だけ鎖場がある。でも、鎖に頼るよりも岩に手を掛けて登る方が安全なので、手の位置、足の置き場を指示しながら登った。
“天狗の硯石”は、2.5m×2m位の大きさで真ん中が少しえぐれたようにへこんでいて、大きな硯のようだ。
硯石の上に立ってみると、あの高鼻の天狗が一本歯の高下駄を履き、天狗のうちわを持ち、ここから下界の様子を見ていたような気がする。ここから眼下には長野市街が広がり、南東には大座法師池が見えるはずだが、この日は霧が出ていて、何も見えなかった。
すっかり高木が無くなり、クマザサの中に高山植物や花が沢山見られるようになった道を上っていくと、戸隠の中社から登って来る西登山道との分岐だ。
この辺りでは、すっかり霧に覆われ視界は数十メートル。でも、時々霧が流れて麓の池が薄らと見え隠れしていた。
西登山道は道程は少し長いが、比較的緩やかな登りなので、最初の山登りなので、このルートも考えたが、私自身ここは1回だけ、中学生の頃通って、ダラダラ登る道であまり好きではないし、小屋から戸隠の中社まで、車で行かなければならなく時間のロスもあるので、いつも登っている南登山道にした。
このあたりが一番つらい登りだ。視界が開け頂上方向には南峰直下の鳥居が見えてくるのだが、この日は霧で全く見えない。
戸隠連峰の最高峰高妻山が、大空に三角錐の穂先を突き上げている様もこの辺りから見えるのだが、やっぱりダメ。
そんな風景が広がれば、それらが応援してくれるので頑張れるのだが・・・。
北峰(本峰)への登山道から一段右下の見晴らしのいい場所には、赤い屋根の飯縄神社の社が祀られている。
社の前から目前にパノラマが広がるはずだが、この日は霧で遠望はきかない。
晴れていれば、信越境の山々から志賀高原、菅平の根子岳、浅間山や上信境の山々が見えるのだが、仕方ない。
神社まで下りて、一応ここまで無事に登って来たことのお礼参りをした。
南峰から頂上までは、一旦鞍部へ緩やかに下りて、もう一登りしなければならない。
鞍部へ下りると、何年か前に、この辺りにトイレができた。排尿、排便等で地下水の汚染が進み、環境破壊や山野草や動植物の生態系のバランスが崩れないための措置らしいが、これも大変なことだ。
よく山へ行っていた昔は、普通にその辺でオハナツミ、キジウチといってしていたけれど、時代とともに変わってきたようだ。
頂上へ続く笹薮の道を歩くと、アザミやワレモコウがいっぱいだ。
ウグイスの鳴きがずっと聞こえている。春先には麓で鳴いていたウグイスが、今では山の中腹辺りから鳴いていて、頂上までも上がってきているようだ。登りながらずっとウグイスの鳴き声が聞こえていて、すぐ近くで気配を感じることもしばしばだ。
最後の一登りをしたら、霧の中に飯縄山山頂1917mと書かれた標柱が見えてきた。
頂上に着いたらラーメンを作って食べるんだ〜を繰り返し、やっとその目標が達成され様としていた。
孫もやっと着いた〜!じゃあ、標柱にタッチしてと、タッチ!(9:20)
ジイ早くラーメン作って!
汗で濡れたシャツは、活動を止めた途端寒くなって来たので、上着を着させ、すぐにガスバーナーで、お湯を沸かし始めた。
お湯を沸かしている間に、高い山に登ると水が沸騰する温度が低くなると言うことを説明したが、そんなことは分かるはずも無い。
気圧が低くなるため水の沸点(沸騰温度)もが下がる。
標高2000mではお湯は93℃までしか上がらないので、この飯縄山では95℃位かな?
そんな話しをしているうちにお湯が沸き、早速カップラーメンに注ぎ、数分待って、この日のメインイベント、飯縄山の山頂でラーメンを食べるが、実現した。
この話は、山へ行くか?と聞いたとき、何を持って行くの?何を食べるの?などいろいろな質問があったときから始まっていたのだ。
天気もあまり良くなく、じっとしていると寒いので、ラーメンを食べ終わると早速下山だ。(9:55)
頂上から先ほど来た道を、まず鞍部へ向かって下り、南峰へ登る。程なく南峰へ到着。(10:10)
南峰では、赤とんぼが沢山飛んでいたので、孫はこの指に止まれと、指を立てていたが止まってはくれない。
南峰の標柱を右手にお花畑の道を下り始めた。下山していく登山道を見下ろすと、その周辺は笹薮や草野原で、お花畑になっている。
でも、登山道は急で不規則な石段状になっている。上りでは、気にならなかったが意外なほど急な坂道だ。
そんな中、少し下がった草原のような場所が、戸隠中社と一の鳥居への分岐点だ。
分岐点を過ぎ、比較的見晴らしの良い尾根道を下り森林帯へ入ると、間もなく「天狗の硯岩」だ。約30分で下りて来た。(10:40)
この下りでは、傾斜が急なので何度も転びそうになる。
上りに気がつかなかった十三番目の石仏、最後の「虚空蔵菩薩」が、天狗の硯岩の手前にあった。
天狗の硯岩を出発。ここから下は、草つき尾根を横切りながらのジグザグ道を下る。
花がたくさん咲いている草薮を下ると、水場。その手前に、上りで見つからなかった十二番目の大日如来があったのだ。
孫は、上りに見つけられなくて ごめんなさい と大日如来にお参りをした。
一休みすると、元気良く歩き始めた。ここからがいよいよ急登。それも露出した石と黒土で滑りやすい急斜面。
標高が1774mになって、高木が減りクマザサや低木で視界が開ける。そろそろ森林限界だ。飯縄山のような標高1917m程度の山だと頂上直下100mくらいが森林限界なのだろう。高山の短い夏、花が沢山咲いていた。
森林限界について説明したが、ピントこなかったようで、孫は、こうした自然の変化にはまだ興味を示さなかった。登ることで精一杯の様だった。
約5時間に及んだ、孫との初めての登山。
楽しかった山旅、事故も無く終わってホッとした。
子供だから転んで怪我でもしたら、背負って下りなければ・・・なんてことも考えていたが、そんなことも無く元気で下山できたことが何よりだった。
全般に振り返えると、特にすごく疲れたとか、もう嫌だと言うことも無く順調な登山だった。
これは、今回のような、曇り空で少し涼しい天候だから、あまり体力を使わずに登れたのかとも思う。
残念だったことは、晴れている時、頂上からの360度の素晴らしい眺望を見せてやれなかったことだ。
第十三 虚空造菩薩
第十二 大日如来
最初の水場
富士見の水場
番外 馬頭観音