みどりの季節
公園内の樹木は、光の加減でみどり色と言ってもいろいろな色合いをみせている。
公園に入ったすぐの森は、少し青みが勝ったみどり色で、やや硬めの色合いで、あまり好きなみどり色ではない。勝手なことをいうようだが好みだから仕方ない。
空に向かって目を遣ると、春先から出始めたまだまだ新しい葉は、強い太陽光に射抜かれ葉脈まで見えるような勢いで透かしてる。それでも複数枚の葉っぱが重なると、薄きみどり色から濃いみどり色に変わる。
遠くから、あれっ?と思う木が見える。濃いみどりの葉っぱが生い茂っているが、雪でも降ったかのように葉っぱを隠している。
ヤマボウシだ。ハナミズキが終わる頃から、それに似たヤマボウシの花が咲き始める。
純白の大きな花弁をもつ花に見えるが、これは総苞片という器官で4枚ある。本当の花は、中心にある葱坊主のような固まりで25個もの集まりの頭状花序になっていて、その1個1個が雌雄両性花になっているそうだ。
この木は、みどり色というより、白に覆われてしまっている。
歩いて行くと、どうしても光が気になり上を見上げてしまう。
そして、光が葉を透かして見える光景が好きだ。
光って輝いている空間。本当に葉っぱが若葉で薄いのか、光が強すぎて透けて見えているのか。葉っぱがどんどん生長して、少しずつ葉肉をつけて濃さを増す。さらに重なり合って濃いみどりになり、黒っぽくも見える。そんなグラデーションが好きだ。
公園内は起伏があるが、少し坂を下りかけた時、目の前に現れた高い木。
他の木よりも一段と高く、それに伸び伸びとした感じで、若々しいきみどり色が目に飛び込んできた。他の木と違っているわけではないが、スー、スーと言う感じで上へ上へと伸びている枝の形と、青空にきみどり色が印象に残っただけなのだろうが・・・・
公園内にあるグランドの土手には、小さな花が沢山咲いている。
4月の初め頃は、オオイヌノフグリが土手一面に咲き、今はニワゼキショウが沢山咲いていた。
ニワゼキショウ(庭石菖)の由来は、葉の形が水辺に繁殖するセキショウ(石菖)というさといも科の植物に似ていて、また、庭によく生えることから名付けられた、そうだが、セキショウを知らない。文字からすれば菖蒲、アヤメの仲間のようだ。
図鑑によれば、学名の Sisyrinchium という名前はギリシャ語の"sys"(豚)と"rhynchos"(鼻)に由来し、豚がこの植物の根を掘り返す習性を持つことをあらわしているらしい。
いつかも書いたかもしれないが、植物の名前のつけ方は、大して考えてつける訳ではなく、見つけた場所とか、発見者がひらめいたことで決めてしまうことがあるようだ。
掃溜菊 (はきだめぎく)は、植物学者の牧野富太郎氏が、掃きだめでこの花を見つけ、「掃きだめ菊」と名づけた、という。
こんな話しを聞くと、人間の子供にしても、結構簡単に名づけられてしまったような名前の人もいるが、いずれにしてももっと考えて欲しいなんて感じる。
いつも野鳥を見に行く森には、チョウジソウ(丁字草)の群落があり、今、沢山の花を咲かせている。
これが、野生絶滅あるいは絶滅危惧種に指定されている花か?と疑いたくなるほどいっぱい咲いている。
この花は、かつては全国的に分布する普通種だったようだが、近年になり減少が激しく、2000年版環境省レッドデータブックでは、100年後の絶滅確率が約
97% と推計され、絶滅危惧種に指定されたそうだ。
その後、2007年8月の新しい環境省レッドリストでは、準絶滅危惧に評価替されたというから、ここのようにかなりの場所で、快復生長してきているのだろう。
そういえば、この公園ではかなり広く縄張りをして、バーダーがやたらに森の中を歩き回らないように、動植物の保護をしているから、その成果の現れかもしれない。
みどりの季節、それは人間を含め動植物が成長するのには、最も良い時季だ。
まだまだ軟らかさが残る草木の葉っぱが、これから迎える梅雨では、若葉はどんどん生長し、葉っぱの厚みも増しみどり色も一層濃くなる。
今は太陽の光を透かしている葉っぱも、梅雨が明ける頃には、夏の強い太陽光は透かせなくなるまでに生長するのだろう。
そして、強い太陽光から日陰を作り、私たちを護ってくれる。
葉っぱの合間からは、木漏れ日が射し、いよいよ本格的な夏を迎える。そんなみどり濃い季節へと移ろう。
濃いみどり色の木陰は、日向を歩き、汗を噴出しながら来た我々をホッとさせてくれるだろう。