山にも遅い春が遣ってきた 

連休が終わり、世の中は普通の生活に戻り、季節は夏日や既に真夏日という日もある初夏の陽気になり、辺りの新緑は、緑の濃さを増し、もうそれほど新鮮味が無くなって、普通の緑色の景色になっている。
北信濃の里では、杏やりんごの花が終わり、初夏を思わせる気温になってきた。遠く北アルプスの山々は、まだ残雪で白いが、里に春を告げる「雪形」が見えるようになった。ちょうど、白馬岳本峰から小蓮華山へ向かう三国境辺りの斜面に現れる「代掻き馬」が今年も見えていた。
2月のスキー以来の飯綱小屋へ、様子を見に行ってきた。飯綱小屋では、入口にある桜の花が終わる寸前で、花びらがヒラヒラ舞っていた。

早朝に出発しようと起きてみたが、どうも天気が良くなさそうだ。
でも、6時過ぎに家を出た。小雨が降っていて、ワイパーを間欠で
動かしながら、高速道路に入った。
道路は、それなりに混雑していたが、休日の日曜ドライバーの運転
と違い、仕事の車が多いので比較的スムースに進んだ。

群馬県と長野県の県境の長いトンネルを抜けると、さっきまでの天気
が嘘のようだ。カラッと晴れ渡り、明るく眩しい太陽の光が飛び込ん
できた。
気温も、横川では14℃だったのが、この辺りでは20℃だ。
これまで、何回もここを通っていたので、目の前に広がる八ヶ岳の山
や北アルプスの遠望を見ていたはずだが、この日はこうした光景を、
初めて見たような、新鮮な感覚だった。取り分け、北アルプスが、
北部の白馬岳から槍・穂高まで端から端まで見えていたからだ。
八ヶ岳の山並みでは、外れにあるこんもりした蓼科山の天辺付近の残雪が印象的だった。
この辺りの山を見ると、春特有の萌えるような新緑の樹木の間に、白っぽい桜色をした山桜や、
今が旬のフジが薄紫の藤色の花を咲かせていた。

この日、長野では気温が29℃まで上がると予報では言っていたが、佐久平で20℃、北上するに連れて気温が上がって、長野市内に入ったときは、23℃になっていた。いつものように、食料を調達して善光寺さんの裏山を登っていく。
七曲りの沢筋に入れば、少しは気温が下がるかと思ったが、相変わらず23℃、さらに上って台座法師池を過ぎる辺りからは、気温や積雪が変わるのだが、この日の気温は上がりっぱなし。小屋に着くと24℃だった。この気温、漸く山にも遅い春と初夏が一緒に遣ってきたような陽気になった。。

小屋に着いたのが11時過ぎ。いつものように、まずは小屋の掃除を済ませて、天気がいいので外へ布団干し台を出して布団干しをした。
一通り綺麗になったので、昼食だ。今回は1人なので、食事も簡単に出来るものにした。今は便利になり、何でもチンするだけで食べられる物が多くなった。全部がそうではないが、今回はそういう類のものが多い。
昼食後は、冬の間に汚れていた窓を綺麗に拭き、外へ鳥が来ても窓越しに写真が撮れるようにした。
ここは、部屋の中に居て窓越しに馬鹿面をしていると、意外に鳥が遣って来て、写真に納まってくれる。
今回も、アカゲラ、アオゲラが何回か来て、白樺をチョコチョコ歩いていた。
ベランダもきれいにして、梅雨を前に久しぶりに塗料を塗った。ベランダもずいぶん傷んできたが、こうして塗料を塗っておけば、まだ大丈夫だ。

天気は上々、時間もまだ3時。近くの大谷湿原へ行ってみた。まだ、枯れたままの葦原で、これから新しい葦が出てくるのだろう。ここのミズバショウは、もう最盛期を過ぎたようだが、まだまだ見れた。ここは、小屋へ来ると必ず寄って、飯綱山を背景に写真を撮っていく場所だ。
そして、この木道は、娘が2歳頃、妻と3人で歩き始め、それからは毎回飯綱へ来たときには歩く所で、歩き始めの頃を思い出す。

湿原の入り口の木で チョッピーチュ チッチクイ チリリー と良く通る鳴き声でアオジがお出迎え。

入口付近のミズバショウは、ほとんど緑の葉っぱだけになっていたが、リュウキンカの黄色い花がたくさん咲いていた。
木道に沿って歩くと、葦の中からオオヨシキリのギョッシ ギョシと鳴き声が聞こえる。でも、数はまだ少ないようで姿は見えないが、あの大口を開けて鳴く姿を思い出す。

湿原の淵を回る遊歩道を歩いて行くと、ミズバショウからニリンソウの群落に変わる。

ニリンソウは、ちょうど見頃。
良く見ると、二輪の内一輪は開花状態だが、もう片方は蕾でいるのが見られる。必ずしもそうではないが、結構多いような気がする。

それに、花が1個のものや3個付いているものもある。

ニリンソウの次には、リュウキンカの大群落だ。
山側から何本も小川が流れ出していて、それに沿って黄色い花が株になって生えている。その流れが、湿地に入るとリュウキンカの群落となって広がる。

リュウキンカの花を見ながら歩いて行くと、キョロイ キョロイと野鳥の鳴き声が聞こえた。アカハラかな?と辺りを見回すが姿が見えない。アカハラの鳴き声とは少し違う。
しばらく鳴き声を聞いていると、リュウキンカの向こうの枯れた葦の地面で動く鳥の陰。アカハラではない。近くの木の枝にもう1羽発見!
クロツグミだ。今季初めてのクロツグミ、木の枝であっちを向いたり、こっちを見たり、でも飛び立とうともせず、しっかり観賞させてくれた。

今回は、雪解け後の遅い春が遣って来た高原で、のんびり過ごすことが出来た。

樹木がやっと芽吹きだし、枯れ色だった世界が少しずつ新緑色になってきて、眠っていた世界が、目覚めて活動が始まったという感じがする。
ミズバショウ、ニリンソウそしてリュウキンカが咲けば、高原にも漸く春が来たという感じだ。また、アオジが囀り、夏鳥のオオヨシキリやクロツグミが来れば、高原にも初夏が遣ってきたということだろう。

これから飯綱の小屋では、ヒトリシズカ、フデリンドウなど次々にいろいろな花が咲いてくるのだろう。

翌朝は、早起き?して、いつものパターンどおり、戸隠方面へ出かけた。勝手に命名した「アルプス展望台」という、そば畑及び鏡池経由森林植物園行きのお決まりコースだ。

まずは、アルプス展望台。小屋を出て、バードラインを走り5分で到着だ。
ここは、斜面に3面広い畑があり、夏そばと秋そばの2回作られるようだが、そばを蒔く前の今は、背の低い菜の花が育ち、黄色い花を咲かせていた。6月下旬には、白いそばの花でいっぱいになっているだろう。
周囲の林は、まだ枯れ色が多いけれど、山桜や新緑の若葉が芽吹き始め、彩がでてきた。
戸隠連峰は、雪がほとんど消えて、沢筋に残る程度になったが、一番高い高妻山はピラミットのような三角の山容に、まだかなりの雪を残していた。
この3面ある畑の一番上の畑の畦道まで行くと、北アルプスが良く望める。遠く穂高・槍ヶ岳まで。

木道から山裾へ歩くと、小川に沿ってミズバショウが、沢山咲いていた。

再びバードラインに戻り、鏡池に向かう。
バードラインを走り、林を抜けやや下り坂になった辺りで、前面いっぱいに北アルプスの山容が飛び込んでくる。

そこを過ぎると、戸隠の入口宝光社だ。
戸隠は奥社・中社・宝光社などからなる神の住む所として戸隠神社や宿坊で栄えている。

その起こりは遠い神世の昔、「天の岩戸」が飛来し、現在の戸隠山の姿になったといわれている。

そんな宝光社から、山道に入り鏡池に向かう。この道をゆっくり窓を開けて走ると、いろいろな野鳥の鳴き声が聞こえ、時々姿を見せてくれるので、楽しみな道だ。

鏡池は、背景の戸隠山を湖面に映すから鏡池になったのだろう。この日は、もう陽が上って時間が経っていたが、湖面は静かで山を映し出していた。

鏡池から、また山道をゆっくり走る。ここら辺りも珍しい小鳥が飛び出してきて、時々パチリ!と写すこともある。
森林植物園に入っていくと、野鳥の鳴き声がいっぱい聞こえてくる。
緑が池の淵には、桜が咲いていて、山の風景に彩を添えている。
ここは、野鳥が沢山居る。今年も早い夏鳥は到着して巣作りや縄張り争いなど、活発に動いていた。
森中に響き渡るカッコウや独特の鳴き声で飛び回るツツドリなど大型の野鳥。
カラフルなキビタキが綺麗な声で歌っていた。小鳥たちも恋の季節なのだろう、2羽で飛び交ったり、1羽を取り合うので追い掛け回したりと、見ていて面白い。

森林植物園の中には、沢山の小道があって、植物や野鳥を見ながら一日中居ても飽きない。
いつも行くと、中央広場からみどりが池の左側から、ぐるっと半周して、いこいの森のバリアフリーの木道を歩く。山側は唐松の高木、右側は雑木林で湿り気の多い地面は、ミズバショウだったりカタクリ、キクザキイチゲ、ニリンソウ、イチリンソウなど小さな花が見られる。
途中から山側のカラマツの小道に入り、カラマツの高い枝でカッコー カッコーと調子良くカッコウの鳴き声を頭上に聞くが、姿が見つからない。鳥は、なかなか利口で、鳥の方に目線が向いたりすると鳴き止む。そして、逸らすと再び鳴きだす。さらに見つかると、サッと飛び立ったりと、人間とは違い危機意識が強い。
カラマツ林を良く見ていると、野鳥が結構沢山居る。コサメビタキやカケス、エナガなどが枝から枝へ飛び回っている。
餌になる毛虫などが沢山居るようなのだ。

高台園地を越して、鏡池に通じる外周の小道に向かう。高台から山の斜面の道を下りながら、小川の筋にはミズバショウが見頃になっていた。

高い木の枝には、夏鳥のサンショウクイが静かに止まっていた。対照的にチュンチュン チュンチュン鳴くのは、ニュウナイスズメ。
ミズバショウやリュウキンカの花咲く地面に下りて、地面を突っつくアカハラ。

外周のこみちを奥社へ通じる随神門方面に向かい、途中から杉の森を通る小鳥のこみちへ入った。ここは、毎年赤い鳥が遣ってくる場所で、カメラマンが集まり、いろいろ問題になった。今年もあと少しで、その時季になるが、せっかく渡って来て、この森で子育てをする野鳥を静かに見守って欲しいものだ。
水芭蕉のこみちに出ると、人の声が聞こえ、ずいぶんにぎやかだ。まあ、この森林植物園のメインストリートといった場所だからだ。それに、野鳥が沢山見られるし、植物も沢山生えているからだろう。
ミズバショウ園の休憩場所には、十数人の人たちがカメラを据えて、あっ出た!ああ 入ってしまった!とか言っている。何かと思えば、アカゲラが子育てをしているらしく、木に開けた巣穴に顔を突っ込んだり、出入りしたりするところを見て、一喜一憂しているところだった。

ミズバショウ園から小川のこみちに入ると、右にカラマツの台地、左下に水量が多い小川が流れ、涼しい場所だ。アオジが綺麗な声で鳴いているのを見ながら歩いて行くと、木道の下から飛び出してきて手すりに止まったのはミソサザイ。すると、いきなり大口を開けてチリリリリ チリリリリ と鳴きはじめ、木道を歩いている人たちもびっくりして、このミソサザイの行動を見ていた。

戸隠で、初めて見つかった、トガクシショウマだが、今はなかなか見られない。
小屋にも一株あり、昨年は紫の花を咲かせたが、今年は、咲いていない。

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2013  May 24  tama
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