猛暑を逃れて緑の森歩き

しばらくぶりに訪れた高原は、もう秋の花のコスモスが咲き乱れ、まだ夏空の真っ青な空と、モクモクと湧き立つ白い入道雲のコントラストが綺麗な風景を織り成していた。
この辺りの気温は21℃、下界ではこの日27℃だったが、そこは信州、日陰に入れば、スッとする涼しさ。
最近は、こういう感覚をあまり体感できなくなってしまったが、子どもの頃の信州の夏はこんな感じだった。
こんな涼しいところにいると、いまだに続いている今夏の猛暑を思い出すと嘘のようだ。
ここに着いたのは、昼前の11時半。お昼にはちょうどいい時間。さっそく行き付けの蕎麦屋でそばを食べることにした。
ここの蕎麦屋の若旦那のブログ「冒険家Sの冒険の書」をいつも見ていたので、次に行った時には、話しをしてみたいなぁ〜なんて思っていたのが、実現した。
ブログに載っていた、店先で育てている秋蕎麦の話しや、私たちの叔母が、こちらのおばあちゃんと懇意にしてもらっていて、戸隠の珍しい植物の苗を頂いたりしていることなど、忙しい仕事の合間に話してきた。

暑い都会では、お腹が膨れれば、動くのが嫌になってしまうが、ここの涼しさは、そうはさせない。
まずは、蕎麦屋から程近い蕎麦畑へ行ってみた。
畑には、秋蕎麦が一面に青々と育っていて、ところどころで白い蕎麦の花が咲き始めていた。畑一面に花が咲くのは、もう少し先になりそうだ。
秋そばの花が咲き始めた畑の畔には、萱(ススキ)が青々と生い茂って、風に大きく揺れていた。
萱の先には花穂が開き始めていた。まだ、赤っぽい色だが、もう少しすれば、白い毛が生えてきて、穂全体が白っぽくなり、秋の風物詩ススキの見ごろになる。そして白い穂先にある種子は、風に乗って飛んでいくのだろう。
高原は、もう秋風が吹き始めているようだ。

前夜から降っていた雨は、夜明け前に止み、気温は14℃まで下がって、じっとしていると寒い朝を迎えた。
緑の森の朝は、どこからともなく聞こえてくる小鳥の囀り、時々吹くそよ風が、緑の葉をサワサワと音立てる。そんな緑の葉陰を通して射し込んで来る朝陽が暖かく感じる季節になってきた。もう高原は、猛暑などすっかり忘れた時季になっていた。

1ヶ月もすれば、この辺りの緑はすっかり色づき、緑の世界は鮮やかな彩の世界に、そしてその後には、辺りを白い雪が覆いつくし、寒い冬が訪れる。短い夏に精一杯生きた植物は、厚く積もった雪の下でじっと暖かくなるのを待つのだ。

今年の夏は、各地で短時間で記録的な大雨が降り、大きな被害が出た。こうした異常気象を生み出してしまった我々は、時々こうした地を訪れ、野に咲く草花や緑を目にし、緑の野山を吹く風の音を聞き、澄んだ冷たい空気をいっぱい吸い込み、環境の大切さを思い出さなければならない。
また、緑の森を歩こう。

緑の高木が、空を狭くして、その青空に白い夏雲がモクモクと湧き上がっているが、樹木の間を吹き抜けて行く風は、涼しく頬を心地よくなでていく。
陽射しは、まだまだ夏のようだが、緑の木陰に入ると冷んやりする。
この辺り一面、緑の世界に変わるのは、5月から梅雨、盛夏と過ぎ8月いっぱいだろう。

南北に10km余り、衝立の様に聳える戸隠の山々。いつもは荒々しい岩肌を露わにしているが、この時季だけは、山全体が緑に覆われているように見えるが、本当は周囲が緑に包まれる時季なので、そんな風にも見えるだけなのだろうか。この短い数ヶ月の間に植物は、1年分の活動をするのだろう。
9月の声を聞けば、紅葉・黄葉が始まる。それは植物が、冬に備えて休眠に入る準備なのだ。
常緑樹は、ほとんどがそのまま冬を越すのだろうが、古くなった枝葉は茶色く枯れて落ちていく。
広葉樹は、根っこから吸い上げていた水分・養分を完全に止めて、葉っぱを色づかせ、我々の眼を楽しませてくれるが、樹木はしっかり冬を越して、また雪解け頃には新しい芽を出す準備をするのだ。

緑の樹間を通る木道を歩く。今は、セミの鳴き声が多いはずだが、例年に比べると少ないように感じる。
この時季、葉っぱが生い茂り、野鳥の姿はほとんど見られないし、繁殖期と違い鳴き声も聞こえない。時々は聞こえても姿は見えない。
それに、渡って来た野鳥は、子育てをして、今度は家族連れで渡って行く準備にはいっているのかも知れない。
9月から10月頃は、山で一夏を過ごした夏の渡り鳥が、都会の公園で一休みして、南の国目指して渡って行く。
そんな姿を、家の近くの公園で見るのも楽しみだ。

緑の森を歩けば、少し前は夏の花が沢山咲いていたのだろうが、今は夏の花は終わりかけ、数少ない秋の花と夏の名残の花が少し咲いている。
夏の花に代わって、結実した実などが、赤や黄色に色づき、緑の森に彩を添えている。
春ににぎやかに咲いたミズバショウは、大きく葉っぱだけが伸びているが、そこに熊が遣ってくるようだ。木道脇のミズバショウの湿地には熊が動き回ったような形跡が何箇所にも見られる。木道の支柱には、カメラが何箇所も設置され、熊の生態を観察しているようだ。

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2013  Aug 27  tama
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