春五月・・・風薫る五月・・・と言っていたら相手は自然、なんだかもう春なんて言う時期ではなくなってきたような感じだ。
公園の藤棚は、連休明け頃見頃になっていたが、今はもう枯れたような終わりかけのフジがぶら下がっていた。
もっともだ、このところ天気が良くなれば、夏日や真夏日になってしまい、藤棚の脇にある噴水では、幼子たちがキャーキャー言いながら水しぶきをあげていた。
地面に落ちる木陰もはっきりしたコントラストが付き、明るく強い陽射しを感じるようになってきた。
この季節、草木の生長が著しく、数日見ていなければ、あれっ?と思うほど変化して花が咲いていたり、伸びていたりする。
そして、これからのもっと強い陽射しの下、草木や花が、もっと鮮やかに青、緑色を濃くしていくのだろう。
やっぱり、四季のうちで一番気持ち良く、元気が出る季節のような気がする。

庭には沢山のプランターや植木鉢が置いてある。そのプランターのほとんどにゼラニュウムが植えられている。以前は我が家のベランダで沢山花を咲かせていたが、風当たりが強すぎたり、家を空けて水遣りの心配があったので、こちらへ引き取ってもらった。
ゼラニュウムは、根付きが良いようで、強風で折れた枝などを土に挿しておけば根が付くので増やすのは簡単だ。そんな風だからやたらに増えてゼラニュウムだらけだ。
この花、見た目は赤や白、ピンクなどいろいろな色があっていいのだけれど、茎や花には独特の臭いがあるので、これも好きずきなんだろうが、私はあまり好きな臭いではない。
ゼラニウムは園芸上の名称だそうだが、分類は難しそうだ。ペラルゴニウム属(テンジクアオイ属)に属し、仲間には蔓性のアイビーゼラニウム、大輪夏咲きのペラルゴニウム、香りのよいニオイゼラニウムなどがあるそうだが、何だか良く分からない。
以前、普通の?ゼラニュウムのほかにアイビーゼラニウムも育てていたことがあった。
まあ、綺麗に花を咲かせてくれれば、分類なんてどうでもいい。

庭の西側、隣りの家との境には大きなナンテンが茂っている。春先に沢山の花を咲かせたハナスオウの木も3mくらいになり、今は大きな葉っぱを茂らせている。
その根元を見ると、緑のすうっと長〜い葉っぱを伸ばし、その合間に紫の花を咲かせている。そんな花の名前は知らん!そうシランがひっそりと咲いていた。
ラン科植物といえば、湿気のある日陰に育ち、中南米の高温多湿に多い印象だが、シランは珍しく、日向の草原などに自生するらしい。野生のものは準絶滅危惧種らしいが、栽培品として広く普及しているようで、ちょっとした公園でも目にする花だ。

秋に実を付けるユズは、今頃花を咲かせるのだ。
これまで、ユズの花が咲いたところを見てない?訳ではないが、それほど気に留めて見た事がないと言うのが本当だ。へえ〜こんな花を咲かせるのだ、というのが第一印象?だ。
秋と言うより、初冬。もう12月に入る頃まで木に実を生らせておいて採る。大きいトゲが枝のあちこちに付いていて、実を採ろうとすると必ず手のどこかを引っ掛けている。だから、ユズの実を採るのは、傷との闘いでもあり容易ではない。葉陰に付いている実などは、見えにくいから必ず引っかく。

家の東側で玄関の脇には、今ピンクの小さな花がびっしり咲いている。
一見、シバザクラかサクラソウを、とても小さくしたような印象の花だが、名前はイワカラクサ(エリヌス・アルピヌス)。

この頃は、街路樹として植えられているツツジかサツキも一斉に咲き誇っていた。

庭先のプランターに植えられたテッセンが見事な大輪を沢山つけていた。
テッセンに似た?か、クレマチスに似たのかは知らないが、私には区別がつかない。
調べて見ると、テッセンはクレマチスの園芸種の一つだそうで、クレマチス全体を指して テッセンとか、それに似たカザグルマと呼ぶこともあるようだ。下の解説によると右の花は、クレマチスが正解のようだ。


山渓ポケット図鑑「春の花」によれば、「クレマチスのことをテッセンと呼ぶ人が多いが、本物のテッセンは花が小形で、6個の花弁状の萼片を持ち、花柄に苞がある」「クレマチスの花が大形の品種はほとんどが8個の萼片を持ち…」と書かれていた.。

この時期、都市部の家々の庭や公園は花盛りだ。次から次からいろいろな花が開いてにぎやかだ。
妻の実家は、義父で花咲爺さんが育てた花や木が、1年中いつでも何かの花や実をつけている。
4月から、小さい花をびっしりと咲かせるツツジが始まりで、次は大きな花を、これもびっしりと咲かせるリュウキュウツツジが鮮やかだ。葉っぱもツツジ類の中では大きいほうで、花も白色系ピンクの大きな花だ。この花が咲くとパッと辺りが明るくなる。

青葉若葉を吹きわたる爽やかな初夏の風・・・風薫る五月・・・、昔の人たちは、こうした言葉からも察せられるが、良く自然観察をしていたものだと感心する。
この季節、四季のうちで一番気持ち良く、元気が出る季節のような気がする。
でも、日本列島が高気圧に覆われ、青空が広がると思いがけないような暑い日になる。気圧配置しだいでは、この良い季節でも夏日や真夏日が訪れるのだ。


今年は、天候不順が続いて、少し季節が遅れているような感じだが…、こういう風に暑いだの寒いだのと、御託を並べているのは人間だけ、自然界は季節が遅れているならそれなりに、芽を出し花を開き、若葉青葉をどんどん茂らせて行く。
こんな季節は、色に譬えてみれば、季節のことばにも象徴されるように、晴れわたった青空や青葉、若葉のように青だったり緑色が連想される。
こうした青、緑の風景は、暖かな南の地から徐々に北上していく。この時期に、北へ延びて行く高速道路を北上すると、そうした変わり様が顕著に見えて面白い。

都市近郊の住宅の中の畑では…という表現になってしまうが、かつては逆で、ほとんどが畑で、農家が大きな屋敷を構えていて、その周囲を野菜の畑、梅の畑、柿の畑というように沢山の畑を作っていた。
今は、住宅の中の箱庭のような畑で、既に緑のキャベツが収穫を終えて、そこへ肥やしをやって耕そうとしていた。
都市公園の樹木も青々して…と言うが、本当は緑が濃くなってきてと言うのが正しいだろうが、緑が濃くなってきたとは言っても、まだまだ陽射しの方が勝っていて、葉脈を透かし出し見せている。
まだ、陽射しもそれほどではなく、葉陰からの木漏れ日も心地よい。

五月

また同じ時期に、北上した山に着けば、樹木や山々は枯れ色、遠くに聳える山々の頂には白いものさえ見えていた。
地面には、漸く顔を出した新芽が、まだ10cmに生るかならないか程度に柔らかな薄緑色を目立たせていた。
出たばかりの新芽は、この1ヶ月程度の間に、もの凄い生長を見せ、花を咲かせ、辺りを今とは全く違う鮮やかな色彩の世界に変えるだろう。
環境の厳しい地であれば、その限られた期間のうちに、与えられた命を精一杯華やかに生き、そして子孫を残していくのだ。今は、そういう時期なのだ。

そして、春先にはパッと春を待っていた花が咲き出して、今はそれらの春の花の後、端境期を経て初夏の花が咲き誇る時期になった。
数年前、ここに植え替えてから、10cm程度の小形の宿根草だから、今頃になると一斉に花を咲かせる。風に吹かれてサワサワと揺れていた。ピレネー山脈などヨーロッパアルプスの高山帯の岩場や草地に生える多年草の園芸種のようだ。

それだけ、ユズの木は、実を守っているのかもしれない。
それは、生長が遅いことから来ているのかも知れない。桃と栗とは、芽生えから3年、柿は8年たてば実を結ぶという「桃栗三年柿八年」に比べれば、「ユズの大馬鹿18年」などの喩えにもあるように、種から育てる実生栽培では、実るまでに十数年もかかるらしい。


そんなユズの実は、ゴツゴツしたアバタ面をしているのに比べ、花は真っ白でつぼみなどは、すべすべの真っ白い玉のようで、葉陰でひっそりとした感じなので、あまり気がつかなかったのかも知れない。ユズの実は、日本料理には調味料として用いられたり、冬至にはユズ湯などに使われていて重宝している。

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2010 May.23 tama
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