西の空、そこには子どもの頃から、いつも変わらぬ大きな北アルプス高峰が、
                                        やはり昨夜降り積もった様に真っ白な山体を見せていた。

漸くの春

所要があり長野の実家へ行った。母親は今年の天気について、1月は、のふとかった(暖かかった)けど3月は、いつまでたっても、のふとくならねくて(暖かくならなくて)と嘆いていた。

東京からの行きの道中は、黄砂が空一面を覆い、辺りが霞んで春がきたなあ〜と思わせる感じだったが、碓氷峠を越すと黄砂は感じなくなり、空気が冷たく日陰には残雪が見え、信州はまだ春は遠い感じがした。

1月は比較的穏やかで暖かかった気候が、2月に入ると雪が目立った。
3月はもう春だろう、すぐに暖かになるだろう、サクラの開花予想も早いだろうといっていたけれど、今になってみれば、天候としてはやっぱり寒かった様な気がする。

サクラの開花予想はほぼ中ったようだが、少し開いたサクラも冷たい雨に打たれ足踏み状態で順調に開いていくか心配だ。

でも、サクラが咲くところまで来れば、漸く春が訪れた、という感じがする。

3月中旬になって、ずいぶん春らしく暖かい日があったので、近くの公園へ出かけてみた。公園の樹木はまだまだ枯れ色のままだが、ちらほら咲き始めたコブシの花が白く目だってきた。地面の芝もいくぶん緑色が濃くなりかけていた。

行く途中でちょっと寄り道をすると、あるお宅の庭に、何本かのカンヒザクラ(寒緋桜)?ヒカンザクラ(緋寒桜)系のサクラが見事に咲いていたのを思い出した。もう数年前に散歩の途中で見てから忘れていたが、数日前に歩いていたおばさんたちが、たぶんこのサクラのことだろう話をしていたのを耳にしたので、どんなだろうと見に行ってみた。
全体像的に見れば、時すでに遅し!きれいに咲いてはいるものの、盛り時というのはあるもので、その時期は逸していた。

でも、散りかけた花びらや遅咲きの花びらが鮮やかに咲いていた。人間でも一人ひとりが違うように、遅ればせながら花もこの時が盛りとばかりに咲いているものもあり、映像的に切り取って見たり、蜜を吸いにくる小鳥たちの様子と合わせて見ると、それほど散りかけだとか、時期を逸したとかは気にならず、それはそれで趣がある風景である。

実家に着いて、菅平方面の山々を見ればしぐれていたが・・・

そうこうしているうちにお彼岸になり、サクラの開花予想どおり21日にはサクラが咲き始めた。ところがその後がいけない。一日二日暖かいと思っていると冷たい雨が降り、気温も一桁だったり、ぐずつく天気。晴れ間が見えても気温が低く、足踏み状態で開花を止めてしまったようだ。
近くのバス通りでは、毎年場所によっては少し暖かければ1、2本の木が一斉に花を咲かせていたのに、今年はそんな様子が見えない。
結局一週間したが、咲き始めのままで、おかげで今年は長く咲いているのではないだろうか。

そんな調子なので、今日も寒い日だったが近くの桜並木や公園を歩いて様子を見てきた。
お花見スポットは、まだまだ三部か四部咲きといった感じだったが、サクラ祭りなどと銘打って、提灯などぶら下げて屋台なども出てはいたが、花見客の出足は今一歩といったところだ。それでも、数組ブルーシートを敷いて陣取っていたが、寒さであまり気勢も上がらないと言った感じだった。
道路わきにサクラの古木が植えられていて、その下には東屋があり、古木のサクラが満開になると、なかなか風情がある景色になるのだが、あと一週間くらいなのだろうか。

公園を歩いて見て回ると、草むらに春先の小さな花や新芽が出始めていた。ボウボウと伸び放題の枝に黄色い花をつけたサンシュウの木が、これも春らしく霞んだ感じでポワァ〜っとしているが目をひく。マンサクはもう枯れたようになっていたが、それでも錦糸卵のような形状はそのままになっていた。
低木で細かな花をいっぱい咲かせているトサミズキ、ヒュウガミズキとこれも黄色い花だった。こうして見ると、黄色の花がけっこう多いようだ。

この公園は樹木などの植物が多いので、それらを見て回っていると、ヒッヒッチッチッヒッチッというように変な音が聞こえた。野鳥の鳴き声のようだが、・・・果たして何がと???辺りを探してみると鳥影が・・・、この公園では珍しくルリビタキがいた。この公園は野鳥といっても、普通に良く見れる野鳥ばかりで、季節ごとにやってくる渡り鳥やこのルリビタキのように、山間地と平地を行き来するような野鳥はあまり見かけないが、よく探せば来ているのかも知れない。

ソメイヨシノは足踏み状態であまり咲いていないが、シダレザクラはけっこう咲きそろっていた。いつもだったらソメイヨシノのほうが早く、シダレザクラは遅かったように思うが、日当たり状態や風当たりの状況で違うようなので一概には言えないのかもしれない。
学校にサクラは付き物だが、道路わきの体育館に沿って植えられているサクラは、建物の陰で風当たりが少ない箇所だけが咲いているようだ。

樹林公園といつも走っている運動公園に挟まれた直線道路は、この時期サクラの花で明るいトンネルになるのだが、今年はまだだ。黒々した幹が目立っていた。

公園を歩くと、まだサクラがそれほど目立たない分、地面に植えられている他の花が目を引く。

中でも、今一番元気なのはユキヤナギだろう。小さく真っ白な花を、一枝にびっしりつけて、本当に雪が被っている植物のような感じだし、その白さにハッとする。
似たような花で、コテマリも同じように咲いている。

こんな寒い日でも、グランドの周囲のサクラがチラホラ咲き始めると、運動をしていても気持ちが浮き浮きしてきて楽しくできるのではないだろうか。

せっかくサクラの様子を見に来たのだから公園内を歩き回り何か珍しいものでもないかと探して見た。
それほど変わったものは無かったが、初めの方で書いた日から約10日が過ぎていたので、サンシュウやトサミズキ、ヒュウガミズキは少し色あせてきていた。
今日は、桃色の花がいやに目に付いたが、これは何だろう?桃色だから桃のようだ。色がもう少し赤みがかったものと二種類あったが、これらはどうも果実の桃ではなく観賞用のハナモモのようだ。

園内にトンネル状にした棚がつくられていて、そこには秋に実を付けるアケビの弦が、棚に絡みつきながら生えて、トンネルの円弧を描いた天井部分には新しい葉っぱが広がり、その下に白と紫っぽい色をしたちょうちん状の花をたくさん咲かせていた。アケビの実は、子どもの頃山に行ってよく食べたが、花は知らなかった。見たことはあったが、それがアケビの花だとはまったく知らなかった。
アケビの実(果肉)は甘く、柔らかな白い実に種がいっぱい入っているので、口に果肉ごと含んで種だけペッペッペッと吐き出すようにして食べる。甘くて美味しかった。
地面を見れば、瑠璃色が鮮やかなルリムスカリがたくさん咲いていた。一見実のように見えるが、壺形の花が下向きにブドウの房のようにびっしりついていたのだ。
やや地味な色だが地面にびっしり咲いていたのは、ヒメオドリコソウだ。紫っぽい赤みがかった、シソ色といった色合いでよく見ると小さなピンク色の花がひっそりと咲いている。こんな花などを見ていると、やっぱり春なんだと感じる。

近くの公園やお花見スポットを見てきたが、お花見にはサクラの開花状態が少なすぎてちょっと早いし、気温が低すぎる。夜桜見物なんてとんでもないことだ。風邪でもひくのが落ちだ。
今日はすっかりいい天気になり、陽だまりでは暖かいのだが、風は冷たく、朝からいい天気だった割にはサクラが開花せず朝の様子とさほど変わったようには見えなかった。
それもそのはず、昨日の平地での荒天は山では雪だったのだろう。今の時期にしては珍しく?丹沢の山々は雪に覆われていたし、富士山も真っ白になっていた。

漸く春が訪れたかと思っていたのだが、今年はすんなりと春がやって来てはくれそうもない。

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2010 Mar.30 tama
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翌朝は真っ白な山々がそこに見えていた。
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