キツネノカミソリ

市内の南部、我が家から数百メートルのところを穏やかに流れる黒目川。
今、この黒目川を見下ろすように、キツネノカミソリが咲きそろっている。
西の方から梅雨明けが発表されているが、関東地方は何時になるのか、でもここのところ、梅雨明けを思わせる暑っつ〜い日が続いている。
今日も、朝から晴れ上がり午前中に30℃を超える暑さだった。最高気温は、この3日間は33℃を超えていたので、今日もたぶん33℃は超えたのではないだろうか。
市役所からのお知らせでは、今日も光化学スモッグ注意報が出され、夕方6時頃に解除された。

そんな暑い中キツネノカミソリを見に行ってみた。
午前中にと思っていたが、いろいろ用事をしていたら11時を過ぎてしまった。それでも、午後となると、もっと暑くなるような気がしたので、出かけた。

我が家から、近所の民家の間を通り大通りへ出た。暑い!民家の間の私道は舗装されていないから、暑さが違う。アスファルト舗装から立ち上る熱気と太陽からの光線とで熱せられるのだから大変だ。
川のほとりは、多少は涼しさがあるかと思ったが、川の両岸の堤防の土手は草が刈られて、からからに乾いた枯れ草で、この光景を見ていると、涼しさどころではない。それでも、水の流れる瀬音と多少の段差が見せてくれる飛沫の白い色が救いだ。

ヒガンバナと同様に、花が咲くときには葉がない。ヒガンバナは、人里の刈り取り草原や河原だけに生えているのに比べ、キツネノカミソリは林縁や明るい落葉広葉樹林に生えている。
ヒガンバナは毒々しいほどの赤い花を咲かす、がこちらはオレンジ色。キスゲなどにも似た色合いだ。そういえば、花弁の付き方はヒガンバナよりもキスゲと同じようだ。それにしても、この両花、キツネノカミソリはお盆ころに、ヒガンバナはお彼岸に花を咲かせ、なにやらご先祖様と因縁のある花だ。
名前の由来は葉の形がカミソリに似ているとのことや、花だけが咲いていて花の色がキツネの体色をイメージさせることによるらしい。
また、葉が枯れた後に花が咲き、周辺一帯がオレンジ色一色になったのを見た人が、キツネにつままれたようだと、言ったところからきているとか。

河岸の堤防の上部は、段差30メートルくらいの斜面がずっと続き、そこの斜面の雑木林の中にキツネノカミソリは咲いていた。キツネノカミソリは、本州から九州に生育するヒガンバナ科の植物だ。春先からスイセンに似た葉を伸ばし、夏草が茂るころには葉がすっかり枯れて、その後に花茎を形成し、花を咲かせる。

キツネノカミソリは、山野に生える多年草。葉は長さ30〜40cm、幅は約1cmで、夏になると枯れる。
7〜8月、葉が枯れた後、花茎がのびて高さ30〜50cmになり、濃いオレンジ色の花が咲く。
花被片は6個、長さ5〜6cm、おしべは花より短い。ふちは波打たず、基部はくっついて細い筒となり、その下に子房がある。果実は直径1.5cmほどで、なかに黒い種子ができる。

園芸の世界では、キツネノカミソリやヒガンバナのなかまをリコリスと呼ぶ。リコリスは東アジアに10数種があり、いずれも鱗茎という地下茎をもつ。キツネノカミソリの鱗茎は直径2〜4cm。花はリコリスのなかではもっとも早く咲く。】

キツネノカミソリなんて変な名前なので、キツネが頭についた植物の名前を調べてみると、いろいろあるようだ。とりあえず図鑑で見てみると、以下の8種類が見つかった。

キツネアザミ(狐薊)キク科、キツネノカミソリ(狐の剃刀)ヒガンバナ科、キツネノチャブクロ(狐の茶袋)  ホコリタケ科、キツネノテブクロ(狐の手袋)ゴマノハグサ科、キツネノヒマゴ(狐の曾孫)キツネノマゴ科、キツネノボタン(狐の牡丹)キンポウゲ科、キツネノマゴ(狐のまご)キツネノマゴ科、キツネノエフデ(狐絵筆) スッポンタケ科 など・・・

もっとあるようだが、探しきれなかった。以前にも他の花名で、花に似つかわしくない名前が多すぎるというようなことを書いたことがあるが、この花も全くその例と同じだ。花名なんだから花を見た名前にしてもらいたいものだ。葉っぱの形がカミソリに似ていても、それを花の名前にして欲しくない。

梅雨明け間近のような毎日だが、とにかく蒸し暑い。
今日は、特に暑かったように思う。昨日は、まだどんよりして
いたので、蒸し蒸ししたが、それほど暑くは感じなかった。
ところが今日は、少し動くと汗だく、ハンカチではまったく用
を足さない。

キツネノカミソリを見に出たものの、暑い暑い。そしてその場所は、おおよそ分かっていたが、入り口が分からない。ここは市の管理地域で川伝いを柵で囲ってある。土手の上側から入ればすぐだったが、河原側から場所を特定してから行こうと思っていたので、ずっと遠回りをしてしまった。だから汗だくだ。

ようやく川を渡って群生地の森へ入ると、炎天下とは打って変って涼しい。
でも30分くらいも歩いてきたので、汗がなかなか引かない。ハンカチで汗をぬぐうとびっしょりだ。絞ると水が出るほどだ。

それでも、しばらくしたら汗がやっと引いてきた。木漏れ日も遮るような濃い緑の葉が生い茂る森では、この季節はオアシスだ。

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2007 July 27 tama
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