この公園は、荒川の河川敷にあるが幾つもの堤防で仕切られていて公園地域と田圃がある。
田圃の上空では雲雀がしきりに囀っている。雲雀はいきなり垂直に空高く舞い上がって、ベシャ ベシャとかチィーチク チィーチク・・・・・・とさえずり、この鳴き声が終わると、物が落ちてくるように地上へ降りてくる。この光景を見ているのもけっこう楽しいものだ。
ほんとうの雲雀はハイドンの弦楽四重奏曲『ひばり』の、のどかさとはずいぶんかけ離れたものだ。あのけたたましさには驚く。

春風に誘われて・・・・外へ出てみれば・・・・

今までは、北風に吹かれ辺りの風景がはっきり見えていたが、3月に入り、少しづつ様相が変わってきた。
空の青さが白っぽくなって、冬限定で見えていた上州の赤城山、日光の男体山が見えなくなり、比較的近くに見えている富士山や丹沢の山並みが霞みはじめた。

窓から見える、近隣の風景も今まではっきりしていた輪郭がなくなってきたように目に映る。
冬の厳しさから抜け出して、このふわふわっとしたものに包まれる季節は、人間ばかりではなく、草木、鳥たち小さな虫たち、生きるものすべてがホッとして動き始めるときなのだろう。

まだ乾ききった田圃も、あとわずかで水が張られ実りの秋へ向かう。水が張られると水生昆虫や魚類がどこからか現れる。
そして、サギ類がそれらを餌食にやってくる風景がみられるだろう。そのころは、白茶けた静かな今の風景からみずみずしく活気づいた様相に替わっていることだろう。

虫たちや生き物ばかりでなく、人間も外の気配に誘われてうずうずし始める。田圃を囲う土手では、枯れ草の合間から、緑の雑草が新芽を伸ばし始めた。小さな白い花を咲かせているのはタネツケバナ、瑠璃色のオオイヌノフグリ、黄色いタンポポがいっぱいだ。

防寒具を脱ぎ捨て、フィールドへ出かけよう、少し歩けば汗ばんでくる。この気持ちよさ!
カンバスへ向かって絵筆が軽やかに動く、春のうれしさがいっぱいに描かれているのだろう!

ツグミ・シメ・アオジ彼らは、4月、5月頃までこの公園で過ごすようだ。
ツグミ・シメはかなりの数がいる。シメは群れになって行動しているがツグミは団体行動ではなく、単独行動が多いようだ。アオジも単独が好きなようだ。

はじめは、チョットコイ、チョットコイと姿なき出迎えだったが、ついに姿を現した。森の歩道を歩いていると、あのチョットコイ、チョットコイがコッチコイ、コッチコイという鳴き声に聞こえてくる。近くで聞こえる。
そっちの方へ歩いていくと鳴き声が止んでしまい、ハタッと歩を停めて鳴いていた林を眺めていた。しばらくじっとしていたが、また鳴きだす気配がないので歩き始めて、ヒョッと振り向くと何やらヒョコヒョコ歩道を渡っていくじゃありませんか。
そんな中、新参鳥見人tamaが、この日幾種類かの鳥を見ることができた。
また、鳴き声は聞こえど姿は見えずという鳥も数種類いた。おなじみチョットコイ、チョットコイと鳴くコジュケイ.。ケンッという鳴き声のキジは藪の中から鳴き声だけでお出迎え。
でもコジュケイは姿を現してくれた。その他にもよく見かけるヒヨドリ、オナガなどカラスはやっぱりたくさんいた。

また、上空ではノスリとカラスの空中戦?おっかけっこをしていた。今回見かけたのは、ほとんどが留鳥だったが、そろそろ渡っていく鳥と、次の夏鳥がやってくる境に入りつつある時期なので、この時期うまく当たれば珍しい鳥にあえるかもしれない。

今日、春風に誘われてやってきた、この公園は野鳥の多さでは、この辺りでは一番のような気がする。ここで観察している方の資料を見さしてもらったところ、ざっと数えても100種類くらいは見れそうだ。
水辺の鳥から猛禽類、通年見れる鳥から季節限定の鳥、稀に迷い込んできたような希少価値のあるものまで多くの鳥がみれそうだ。
落葉樹が葉を落としてしまう冬は、木の形がはっきり見える季節だ。
それまで葉に隠れていた鳥の巣や、昆虫の冬越しの姿が見やすくなる。
頭上の木には、野鳥の巣らしきものがあった。もう既に巣立った後なのか、これから子育て用に作ったものなのか?定かではないが、・・・鳥の巣もその種類によって巣を作る場所が異なる。カラスなどは高木の高いところを好むようだ。
カケスやキジバトはそう高くない木の上の方に、モズは低木の比較的高いところにといった具合だ。
辺りは、まだまだ枯れた葦が生い茂っているが、足元の地面からは、緑の雑草が少しずつ、勢いよく生えはじめている。これらの雑草は、寒い冬を耐えて、この日の暖かい太陽を待ち続けていたのだろう。
今は干上がっている枯れた葦の水辺にも、やがて水が溜まり植物や生き物が動き始めるだろう。
春風に誘われて、外へ出てみると新しい春の息吹きを感じる。
気早なオオイヌノフグリは、地面狭しと、あちらこちらに小さな花びらを散りばめている。この春一番を報せてくれる、きれいな瑠璃色のオオイヌノフグリ英語では、Baby Blue Eyes というそうだ。
なんだかうれしい名前だ、こんな可愛い名前で。
それに引き換え日本の名前はひどいもんだ。実がそのような形だからといって花の名前にそのままつけることはないと思うが、名前と実態がかけ離れていて、気の毒な花だ。

ようやく春らしい、ちょっと汗ばむような陽気になった一日がやってきた。早朝は、いつもと同じくらいの気温だったが、気温の上昇が早く10時ころには防寒着がいらないくらいまで暖かくなってお出かけ日和になった。
そんな日が2日も続き、春風に誘われて・・・今日は、昨日よりもさらに暖かになり、辺りを見回すと陽射しもやわらかく霞がかった風景は、ほんとうに春色だ。
森は、まだまだ枯れ色で眠ったままだが、枝垂れヤナギだけが目覚めたようにパァーッと明るいように見えている。わずかな変化ではあるが、春が近くに来ているようで、ワクワクしてきて、何だか楽しくなってくる。

春風に・・・誘われて

■■■Nature Information & Obsarvation 2005 Mar.■■■■
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2005 Mar. tama

萌葱色に染まる枝垂れやなぎ

セイヨウタンポポ

Baby Blue Eyes

枯れ草の合間に緑の雑草が見え始めた。ホトケノザも

この公園ではほとんどいつでも見られるモズ

ひょこひょこと歩道を渡るコジュケイ

いつも怒ったような怖い顔をしているシメ

いつもどこかへ思いを馳せているツグミ

ちょっとはずかしくって目線を隠してしまったアオジ

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