そして、始まりの秋

いつもの年だと、9月になると秋の長雨、秋霖があるはずだが、今年は、気温の高い日が続いて長雨の兆しが無かった。
10月に入っても、真夏日があったり相変わらず気温の高い日が続くのかと・・・思っていると秋の長雨が始まった。

太平洋上には台風、日本付近は秋雨前線、夏と秋が同居する状態だ・・・。

長雨は、もう少し続くようだが、晴れるという天気予報に期待して、ちょっと秋を探しに出かけてみた。ずっと続いた曇天から真っ青な秋空の下へ・・・。

周りの針葉樹林には、数羽のカケスがいた。あっちの森からこっちへ、ジェーッという、英名(Jay)の通りの鳴き声。Jay Jay という声とともに、ブドウ色の体と翼の青、腰の白が朝陽に照らされた飛翔姿は色鮮やかに輝いていた。

木々の葉が色づく紅葉。カエデやウルシは赤い葉に、ブナなどは黄色い葉っぱに変わる。
植物の種類によって紅葉する色は決まっていそうだが、そうでもなさそうだ。

よく見てみると、赤く染まるカエデでも、暗紅色、朱色、淡紅色などなど、色づきは微妙に違っている。
このいろいろな色づきを左右して作り出しているのは、太陽の光が大いに関係している。
木々は、冬の寒さから身を守るために葉っぱを落とす。その過程のひとつに紅葉という現象が起きる。

樹木は、最低気温が7℃を下回ると、葉っぱと枝の間で水や栄養分の交換をストップする。
そこで、葉っぱに残された栄養分と太陽光線で科学反応を起こして赤い色素が作られる。

赤い色素を作らない樹木は、葉っぱに有った緑の色素が破壊されて、元からある黄色い色素が浮かびあがってくる。
鮮やかな赤い紅葉は、冷え込んだ後、晴天が続き太陽の光線を十分取り込むことが必要で、日当たりの良し悪しで赤い鮮やかさが変わってくる。
南向きの日当たりがいい場所では、一層鮮やかな赤い紅葉となる。
雨の多い年や陽の当たらない場所では、赤い色素が出来ずに赤が淡い色になったり、黄色になってくる。

こんな風に、太陽の光が赤、黄色の色の不思議を支配しているのだ。
この時期には、そろそろ霜が降りるが、霜が降りるほど一気に冷え込んでしまうと、茶色になって枯れてしまう事もある。

こんなふうに、紅葉は天気と気温に左右される結構微妙な現象だ。だから同じ色は絶対にないのだ。

太陽が作り出す、紅葉のふしぎ

いつも通っていて、その場を通り過ぎていて見慣れたはずの景色でも、あるとき、急に違った景色に見えることがある。

この池も、水鳥が来ていたり周囲の木々にとまってさえずっている小鳥を見ながら、いつも何気なく周囲を歩き回っているが、ふと見ると、湖面に映っている対岸の赤く色づいた桜の葉がきれいだった。

こちら側の黄葉しかけの緑の葉っぱと黒々したヒマラヤスギの間に見える紅葉が、なんとも新鮮な景色に見えるのも、秋の始まりだからなのだろうか。

また、季節が動き始めた。夏から冬への橋渡し、秋がやってきた。
特別こんな言い方をしなくてもいいのだろうが、いつもこんな感覚は持っている。冬から夏への春もそうだが、秋も自然が動いて、その動きが目に見えてよくわかる時期だと思う。
春は、何も無い枝から新芽が出てきて若葉になっていく。つぼみが出てきて花を咲かせる。赤ん坊の成長に似ている。短い間に目覚しい成長をする。

秋も、冬への準備として木々の生長を休止させる季節だ。自分の体力を春まで保つために幹、枝と葉っぱの間の養分補給を絶ってしまう。その結果としての紅葉・黄葉。私たちの目を楽しませてくれるが、実は自然界で生き残る必死の行為なのだ。

こうして、秋が始まる。

秋の陽はつるべ落とし、といわれるほどに早い。さっきまで明るく照らしていた、くっきり陰を落としていた秋の太陽。
山の向こうに沈みかけたら、あっという間に山の向こう、そして空を茜色にそめてはじめた。しかし、これもつかの間、早々に秋の夜長の暗闇がやってきた。秋の短い1日が終わる。 これが、始まりの秋だ。

【水面に映る色づいてきた葉っぱ】

この秋、富士山の初冠雪は、平年より10日遅く、昨年より10日早かったとか。前々日のことだった。

ここから望む、北アルプス白馬三山が薄っすら雪化粧をし始めていた。

ようやく冬の足音が聞こえ始めたがその前に山郷では短い秋が駆け足でやってきた。

山の木々を見ると、まだまだ青々している針葉樹林と対照に広葉樹林では紅、朱、黄に染まりかけている。

もう少しすれば、真っ赤に燃えるような紅葉や陽の光を透き通すような真っ黄色な黄葉が鏡のような湖面に映し出されるだろう。

少し前まで、真っ白な蕎麦の花が咲いていた畑のくろを歩けば、すっかり伸びたススキの穂が風にゆらゆらゆっくりと揺れていた。

夏の間あれだけ青々と元気のよかった草も茶色く立ち枯れている。
やがて朽ちて大地の肥やしとなって、また来る春へと、新しい芽が出る頃につながっていくのだろう。


目を遠く聳える高峰へ移すと、もう何十年前になるだろうか、若く勢いがあった時分に登った高妻山、の姿があった。
表山を縦走し、一不動の避難小屋で一泊、翌朝、五地蔵山を経て高妻、乙妻を往復して牧場へ下山した。
高妻ののぼりは直登のような感じで大きなキスリングを背負っての直登は、今思えば信じられないようだ。
今頃より少し前のすこし涼しくなりかけた頃で、山ではちょうど今頃の季節だったような気がする。
高妻の頂上からパノラマはすばらしく日本海までも見えたことを覚えている。

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Nature of the four seasons/四季の自然

2005 Oct.18 tama
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