右【クロマメノキ:ツツジ科スノキ属】
黒菱平からロープウェイを降りたところの小さな湿原に生えていた。日本に自生するブルーベリーの一つでアサマブドウとも呼ばれる。亜高山から高山にかけての砂礫地で見られ、いずれも土壌が酸性土質を好む落葉低木だ。ピンクを帯びた白色の壷型の花をつけ、果実は9月頃に黒紫色に熟すらしい。
左【チングルマ:
バラ科チングルマ属】
八方池から尾根の登山道へ戻る途中の斜面から流された土が堆積された地に小さい群落をいくつもつくり、たくさん咲いていた。
チングルマは木本植物、いわゆる「木」で「草」じゃなく落葉性の低木だ。茎は横に這って広がり、花つきがよく、盛りには大きな群落を作り一面覆いつくすようなこともあるようだ。
左【ハッポウタカネセンブリ:
リンドウ科センブリ属】
八方ケルンのちょっと下の草むらに咲いていた。高さ10〜15cmくらいの細身の草で、花は小さいが、クローズアップして見ると、るり色に黒い斑点を散らした模様がきれいだ。
右【ヨツバシオガマ:
ゴマノハグサ科シオガマギク属】
八方池から尾根の登山道へ戻る砂礫地に咲いていた。葉はニンジンの葉のように細かな切れ込みが多く、名前のように4つ葉が対生し、花は段状に咲き、花弁の先は、紅が強くなり嘴のようにとがっている。
左【ウメバチソウ::
ユキノシタ科 ウメバチソウ属】
登山道の脇の草むらにたびたび顔をのぞかせていた。5弁の丸い花びらが梅の花に似ていて梅鉢の紋を連想して名前がつけられたらしい。花には普通のおしべの他に仮おしべという花粉を出さないおしべがある。この仮おしべは糸のように細かく分裂して先端に黄色い腺体がある。
右:これ何でしょう?
トモエソウ?
右【ウスユキソウ:
キク科 ウスユキソウ属】
八方池から尾根の登山道へ戻る道端のガレ場に咲いていた。アルプスのエーデルワイスの仲間らしい。高山にも生えるがわりと低い山地帯でも見られる。白く見えるのは苞葉で、中心の黄色い部分が花だ。
左【タカネナデシコ:
ナデシコ科 ナデシコ属】
八方池から尾根の登山道へ戻る道端にたくさん咲いていた。北海道の海岸部で見られるエゾカワラナデシコの、高山系の変種だそうだが、丈が低いわりに花が大きく、花弁の切込みが深く、色が濃いなどの違いがある。
右【タカネマツムシソウ:
マツムシソウ科マツムシソウ属】
第3ケルン左の南斜面に咲いていた。秋の高原を彩るマツムシソウの高山型で、越年草。草丈は低いが、頭花は大きく5cmくらいある。時期が遅かったのか色が少し薄いようだ。
左【タテヤマウツボグサ:
シソ科ウツボグサ属】
黒菱平近辺より上部の登山道脇にたくさん咲いていた。発見地が立山でタテヤマウツボグサと呼ぶそうだ。
花は鮮やかな紫色で、茎の先に数段に密集して輪生する。花冠は唇形、上唇はかぶと状にふくらみ下唇は短く、3裂し、中裂片はさらに浅く裂けている。
花穂が矢立の靫に似ていることから靫草という。
右【キンコウカ:
ユリ科 キンコウカ属】
第2ケルン下の沢になったような登山道脇に咲いていた。茎の上半分に鮮やかな黄色の星形の花を咲かせ、花自体は小さいが、大群落をつくることがあるらしい。ここでは、ポツリポツリと咲いていた。「キンコウカ」は「金光花」の意。
左【オヤマリンドウ:
リンドウ科リンドウ属】
第2ケルン下の登山道の脇のハイマツ帯にポツリポツリと咲いていた。亜高山から高山に生えるリンドウなので、オヤマリンドウと呼ばれ、他のリンドウの仲間と異なり花は茎の頂かその下の葉の付け根までしかつかない。
右【オニアザミ: キク科アザミ属】
この尾根の南斜面の登山道脇に咲いていた。普通のアザミより全体に大きく鋭い刺があるところから鬼にたとえたものらしい。
茎のてっぺんに大きな花を下向きに数個まとめて咲かせるのが最大の特徴だ。
左【ママコナ(飯子菜):
ゴマノハグサ科 ママコナ属】
八方池小屋から歩き始めた尾根の南斜面の登山道脇に咲いていた。花の下唇にある2つ並んだ白いふくらみが、米粒に似ているために、この名がつけられたらしい。緑の中に赤っぽい色をしているので目立った。
右【ムシトリスミレ:
タヌキモ科ムシトリスミレ属】
八方池のほとりの土手に数本ずつ生えていた、高山性の食虫植物。
花茎を出し上部にスミレに似た花をつける。肉質の葉の表面は粘液でべたべたしており、ここに止まって動けなくなった虫を消化吸収して養分としているそうだ。スミレの仲間ではない。
左【クモマミミナグサ:
ナデシコ科ミミナグサ属】
八方池へ下りる登山道脇の岩礫地に生えていた。茎は細く、暗紫色を帯びている。かわいらしい5枚の花びらは、中央で、2つに裂けているので、まるで、10枚の花びらのように見える。咲いている花は小さいわりにはよく目立つ。
左【コメツツジ:
ツツジ科 ツツジ属】
八方ケルン脇の南斜面に咲いていた。葉は枝先に輪状に集まってついて、枝先に白色の花を散房状に1〜4個つけていた。小さくてツツジの仲間の中では地味な方だが、それでもたくさん咲いているところは、はまるで枝に雪が積もったように白くなっていた。
右【ミヤマコゴメグサ:
ゴマノハグサ科コゴメグサ属】
八方池小屋から歩き始めた尾根の南斜面の登山道脇に咲いていた。花は唇形で白、上唇に紫色のすじがあり、下唇に黄色の斑点と軟毛がある。
白い花を小米に見立てて小米草と書き、これが名前となっているようだ。
右【クルマユリ:ユリ科ユリ属】
第2ケルン下の登山道脇に一輪、鮮やかな橙紅色の花をつけていた。
もう少し低いところで咲くコオニユリと似ているが、色はもっと鮮明で、花びらにつやがある。茎の下方の葉が放射状に四方に出ることからクルマ(車輪)ユリとよばれる。
左【ニッコウキスゲ:(日光黄萓)
ユリ科キスゲ属】
黒菱平からのロープウェイを降りた草原に咲いていた。時期的には遅かったようだ。よく大群落になるが、ポツポツとしか咲いてなかった。 蕾は数個つくが、1日に一花ずつ開いてつぼむ。 名前は、花の色が黄色く,葉は萓笠を作るカサスゲ(笠萓)に似ていることと日光地方に多いことかららしい。
右【ワタスゲ:
カヤツリグサ科 ワタスゲ属】
上記コバイケイソウと同じ湿原に咲いていた。綿毛、実はこれは果実であり、それよりしばらく前、灰色のめだたない花が咲く。
よく似たサギスゲは、ひとつの茎に小穂が数個つくので見わけがつく。
左【コバイケイソウ:
ユリ科シュロソウ属】
黒菱平からロープウェイを1本乗り、降りたところは冬季五輪の女子滑降スタート地点。そこに小さな湿原があり咲いていた。高山から亜高山の草原、湿地に生え、葉は広楕円形で互生する。
花は黄緑色だが、花はほとんど終わっていた。
右【オオバギボウシ:
ユリ科ギボウシ属】
八方池小屋から歩き始めた尾根の南斜面の登山道脇に咲いていた。
ギボウシの仲間ではもっとも大型で、淡紫色の花を横向きに咲かせる。花は下から上へ順番に咲くので、長期間にわたって花を楽しむことができる。
左【コバギボウシ:ユリ科ギボウシ属】
第2ケルン下の沢になったような登山道脇に咲いていた。
ギボウシの中では葉が小形なのでこの名がついたらしい。山野の水気が多いところに生える多年草で、淡い紫色の花を下向きに開く。花は1日花なので、古い花はうなだれている。
【晴れればここに白馬三山が逆さに映るはずだが、ガスは切れず・・・】
【八方山ケルン。この真後ろあたりに白馬岳が見えるはず】
【少し残っていた雪渓】
【八方山ケルンから見る、ロマンスリフト終点八方池小屋、第一ケルン、白馬岳から流れ出す白い松川】
この蝶、何蝶でしょうか?
***シジミ じゃないかと思うのですが、ヒメシジミ?名前はわかりません。
でも、ヒメシジミのような気がします。あまりきれいなので、何枚かシャッターを押してしまいました。
何ヒョウモンでしょう?これも詳しいところがわかりません。
お花見ギャラリー
この日写した登山道の脇に咲いていた花たちです。他にも、まだまだたくさん咲いていました。
山は、もう夏の花も最盛期を過ぎたようで、すぐそこまで来ている秋の気配を感じました。見てください。
車で黒菱平まで行き、ロープウェイを2本乗り継いで八方池山荘。ここから歩きはじめる。
ここまで登って来るロープウェイの足下にはたくさんのお花畑が広がっていて、目に付くのはアカバナシモツケソウのピンク色だ。紫や黄色の花も咲いているが、緑の草原にアカバナシモツケソウが圧倒的に広がる。
八方池お花見トレッキング 2005Aug.
この八方尾根は、後立山連峰 (後立山連峰とは、富山県側から見て立山のうしろに聳える長野、富山県境の山々をいう) の唐松岳から東へのびている尾根で、尾根の下部は全体がスキー場になっている。この雄大な尾根が、1998年の冬季長野オリンピックのアルペンスキーの会場にもなった場所だ。八方尾根の標高2,070mにある八方池は、同じ後立山連峰の北に位置する白馬三山、つまり白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳の姿を湖面に映すことで知られている池だ。
登山道は整備されていて、木道や階段状にしたり、道沿いにはロープを張って、ずいぶんと手がかけられている。この手当ては、やはり昨今のモラルの低下が招いた結果なのだろうか。
自然の山でこんな風景は、ちょっとさびしい気がする。私がよく山へ行っていた時分にはロープを張って「そこからはみ出さないでください。」なんて言わなくても登山道からはずれて、やたらに草花が生えている場所には立ち入らなかった。
ちょっとそんなことを考えていたら、ロープを乗り越えて、雪渓から流れ出した小川へ向かうおじさんがいた。おいおい、いい大人がそんなことをするなよ!ロープの意味を考えてくれよ。これだからどうしようもない。
この尾根は、後立山連峰の中でも南の遠見屋根と並んで最も広く長い尾根で、スキー場になっていることや冬山の雪上訓練の場所にもなっており、目印用に途中にはケルンがいくつも立っている。第1ケルンは、八方池山荘のすぐ下にある。
八方池山荘から尾根の南斜面の登山道をジグザグに歩き始めると、両側にはお花畑が一面に広がる。小一時間で第2ケルンに到着した。ゆっくり花を眺めたり写真を写したりしながらの道中だ。この下にはちょっとした雪渓が残っていて、その下から小川となって流れができている。前述のおじさんの話は、ここでの出来事だ。
ここから八方池近くの第3ケルンまでは、距離にして1km弱だけれど高低差があるので、ちょっときつい登りだ。途中にある八方ケルンで一息いれて、あと一踏ん張り。眺めのいい高台に出た。そこには晴れていれば望めるだろう北アルプスの山々が描かれている案内板があったが、その日は乳白色が広がるばかり。そのままこの尾根道を進めば「扇の雪渓」「丸山ケルン」を経て唐松岳へとのびる道だ。
高台から右下に八方池の湖面が光って見え、湖岸に立ち並ぶ人たちを映している。右下へ池に下りていく道があるが、池をぐるっと回ってこようと思い、ここは尾根道を少し登り第3ケルンの先を池に向かって下りていく。池の周りには、私たちと同じく池に映る「逆さ白馬岳」を見ようとガスが切れるのを待っている人たちがいっぱいだ。私たちも池のほとりに陣取り、早朝に出てきたのでお腹もすいてきたし、時間的にも余裕があるのでおにぎりを食べながらガスが切れるのをゆっくり待つことにした。
池のほとりに腰をおろし、池をのぞくと何やらうごいている。オタマジャクシ?と思ったが、ちょっとちがう。サンショウウオらしい、そうサンショウウオだ。たくさんうごいている。
池のほとりでおにぎりを食べながら、今か今かとガスの切れる瞬間を待っていた。ガスの動きがあり、上昇気流とともにガスが上がりはじめ、白馬岳の北側にある小蓮華山の残雪の山容を一瞬見せてくれた。カメラを向ける間もなく、すぐにまたガスに覆われてしまった。それからは池の周りにもガスがやってきた。
八方尾根を訪れたのは何十年ぶりのことだろう?ここは、スキーに熱中していた頃に何回も滑りにきたことがある。
八方池山荘の最終リフトを降りて、そこから一気に八方尾根の麓まで滑り降りる。まるでアルペンの滑降競技みたいなことをやっていたことを思い出す。何本も滑り降りた。
リフトの終点八方池山荘から上の、今回歩いた八方尾根自然研究路も、冬の間は銀世界だ。そこから上部の銀世界へ足を踏み入れ、さらに歩いてより長いコースを滑り降りる。新雪の上に自分だけのシュプールを描いて、楽しいスキーだった。
八方尾根は、こんな風にスキーでは来たことはあったが、雪の無いシーズンに訪れたのははじめてのことだ。
八方池のことは、山岳雑誌や写真集などでよく取り上げられていて、知っていたし、何といっても池に映った逆さ白馬岳の姿があまりにもきれいに写っていて、いつかは行ってみたいと思っていた。
昨年の今頃、知り合いがここへ行ってみると言っていたのを思い出し、それじゃあ今年は、私も行こうと、奥方と娘に話を持ちかけると、「行きたい」の返事。それならもう一人、若い頃から山歩きをしている叔母、もう70を過ぎているが、こちらへも話すとやっぱり「行きたい」という。それなら、暑い都会を脱出し、年代を超えた珍道中はいかがなものかと、出かけた。
出かける前に本で見た、八方池に映る「逆さ白馬岳の姿」を見たい、という思い。しかし歩きはじめると道端に咲き乱れるたくさんの高山植物、これは何々、あれは何々というようにお花見をしながら歩く道は、疲れも、時間をも忘れてしまい、いつもなら愚痴る奥方もこのときばかりは、スイスイ快調に山登りをした。
八方池に着いて、池のほとりに陣取ってガスが切れて晴れ上がってくるのを今か今かと待ってみたが、結局この日は八方池に映る「逆さ白馬岳の姿」を見ることはできなかった。でも、あのガスの向こうにあるはずの山々をそこに描いてみて、こんな風に映るのか、と想像してみると、やはりまた来なければという気持ちになってくる。楽しみがまたひとつ増えたというものだ!
【黒菱平のスキー場に放牧された牛たち。
ここまでくれば牛たちも涼しいだろう。】